昨年末ごろから、良くも悪くもヘビーネットワーカーの注目を集めているタレントブログがある。お笑いコンビ・キングコングのツッコミ担当、西野亮廣のブログ「西野公論」だ。
発端となったのは、2007年12月23日未明。キングコングも出場する、漫才日本一を決定するテレビ番組『M-1グランプリ』決勝戦の放送日。「M-1グランプリ」にかける意気込みを語った上で
優勝してきますわ。(西野公論より引用)
と、高らかに宣言。しかし、ご存じのとおり、2007年の「M-1グランプリ」のチャンピオンは、サンドウィッチマン……。残念ながら優勝を逃してしまった西野は、翌24日に「チンカス西野」なる記事を投稿。
嘘をついてしまって申し訳ございませんでした。 (中略) 悪いのは僕が書いたネタがウンコだったということです。 キングコングが負けた原因は僕です。 (中略) 今日はクソ面白くない漫才をしてしまってすみませんでした。(西野公論より引用)
前日までの自信はどこ吹く風。記事の内容は謙虚を通り越して、自虐的なものだった。そして、この発言以降、事態は急転する。
いくら謝罪したとはいえ、大口をたたいておきながら敗北してしまったのは事実。すると「2ちゃんねる」を中心に西野発言に対するツッコミが続出したのだ。
それを受け、西野は28日、
投げっぱなしの意見をする奴を僕は認めない。 反論の責任を取らない奴。その受け口を設けていない奴。 (中略) とてもカッコ悪いし、わかりやすく言えばアホだと思う。(西野公論より引用)
と、“2ちゃんねらー”に対して宣戦布告。ところが、西野のブログには、読者からのコメントを受け付ける機能がない。そのため、2ちゃんねらーは「お前の反論を受け付けるステージはどこにある!?」と再ツッコミ。1月が終わらんとしている今に至るまで、「2ちゃんねる」や個人ブログでは議論が続いている。
予想外(?)にシリアスな芸人ブログ
ここで紹介したいのは、単なるブログ炎上話ではない。西野ブログの内容だ。
「チンカス西野」「アホだと思う」といったマジな発言は、およそコメディアンのものとは思えない。人を笑わす仕事の“お笑い芸人”が、本分を忘れて熱い書き込みをしているのだ。
事実、芸人ブログの中には、一般的なタレントブログに比べて、文章量が多く、内容がシリアスなものが少なくない。
例えば、品川庄司の品川祐は、ブログ「品川祐による日々のブログ」で番組収録前後の楽屋の風景や、仕事終わりの飲み会の様子などを紹介する一方、ベトナム旅行中、貧富の差を目の当たりにすれば、
逆境の中でもふて腐れることなく、頑張れば、絶対になんかつかめるんですよね。 チャンスは平等ではないけれど、努力さえしていれば誰の目の前にだってやってくる。 (中略) やっぱ努力って凄い。 俺にはハングリー精神ってやつがない。 だから、自分に厳しくしてないと、すぐに努力を怠っちゃう。(品川祐による日々のブログより引用)
と、人生観を大いに語る。
また、ダイノジ・大谷ノブ彦の「不良芸人日記」では、知る人ぞ知る名盤CDや、埋もれた名作マンガを紹介するなど、大谷のサブカルチャーへの造詣の深さを知ることができる。その姿勢は真剣そのもので、2007年、ヨシモトブックスがコミック誌『コミックヨシモト』を刊行した際にも
芸人=面白い、だから漫画も作る、だから面白いとはならんのです、絶対に。 逆に、だからこそ、厳しい目での審美眼が必要だと思うのです。(不良芸人日記より引用)
と苦言を呈している。ダイノジは、吉本興業所属だ。
もはや誰もが知っていることだろうが、ことテレビの世界では、芸人は“役割演技”を求められることが多い。
芸人はその話術からバラエティー番組の司会を任せられることも多いが、たとえボケ担当であっても、司会である以上、ボケ倒すわけにはいかない。半面、クイズ番組では、たとえ答えが分かっていても“芸人”という立場上、あえて面白い回答をすることで場を盛り上げ、インテリキャラの文化人に勝利を譲ることもある。浅草キッドの水道橋博士は、自身のブログ「博士の悪童日記」で『平成教育委員会』で図らずも優勝してしまったことを
まずい、まずい(博士の悪童日記より引用)
と評している。芸人と言えど、いや、むしろ芸人だからこそ、自由に面白おかしいことをおしゃべりしていればいいわけではないのだ。だから、せめて番組のカラーや制作者の意図といった、制約を受けることのないブログの中では「俺節」を語りたくなるのだろう。
彼らのブログを眺めていると、時には、その情熱的すぎるメッセージに驚くことがしばしばある。しかし、それも、すべては芸人ブログが本音で書かれているからこそのお話だ。今回の西野の一件も、誰もが自由に情報発信できるブログというメディアをフル活用しているからこそ起きた“事件”なのだろう。
(文/成松 哲)












