近視を治す新しい治療法として注目されている「オルソケラトロジー」。夜寝るときに矯正用のレンズを装用し近視を矯正すれば、日中は何もつけない裸眼状態で生活ができる。

 人間の目に入ってきた光は角膜と水晶体で集められて屈折し、網膜上で像を結ぶ。きちんと網膜上でピントが合っている状態が正常。対して、きちんと網膜上でピントが合わない状態が屈折異常で近視、遠視、乱視と呼ばれるものである。ほどんどの場合の近視は、屈折性近視で屈折が強すぎるため網膜より手前で焦点を結んでしまうケースだ。簡単にいえば、角膜が出っ張っているわけで、その出っ張った角膜を正常なラインに削るのが「レーシック」。出っ張りを矯正レンズで押さえて正しい形にするのが「オルソケラトロジー」である。角膜はやわらかく、しかも新陣代謝が非常に活発な組織なので、形状が変わりやすく矯正しやすいという特性を利用した治療法だ。

(画像クリックで拡大)

 オルソケラトロジーは米国で40年以上前に生まれ、1990年代後半から世界中で急速に普及。米国では120万人がオルソケラトロジーで近視を治している。夜、寝ている間にレンズを装用し、朝起きたらレンズを外して、日中は裸眼で過ごす「夜間装用」が主流の使い方。寝ている間にレンズをつけるのは、日中は重力でレンズが下がったり、また目をひんぱんに動かすので、正しい位置にレンズが定着しないからだ。

 小学生の頃から0.1以下の強度の近視だった私としては興味深々。日本で始めてオルソケラトロジーによる近視治療に特化した専門診療を始めた赤坂の三井メディカルクリニックを訪ねてみた。ここでは現在、オルソケラトロジーの次世代技術である前眼部統合矯正療法「オサート/オルソ-K」を実践している。

「米国で開発された従来型オルソケラトロジーは、西洋人の角膜データに基づいて発展した技術なので日本人の角膜には必ずしも合致しないケースもありました。また、軽度の近視を対象にしています。このため、治療に用いるレンズのデザインが、基本的には一種類しかないため、0.1以下の低視力には対応できませんでした」と語る三井石根院長。そこで同院では5700人以上の診療実績を基に、日本人の角膜形状を詳細に分析し、1.5ミクロン単位でレンズをデザイン。段階的に分けてステップアップさせて視力を回復させることに成功した(最新のレンズデザインと多段階治療法は日米で特許を取得)。これが同院だけの「オサート」という治療法だ。オルソケラトロジーよりも治療範囲が広く、強度近視、遠視、乱視、老眼にまで治療が可能となった。

(画像クリックで拡大)

 私は普段はハードコンタクトレンズを使用している。レンズを外すと文庫本なら5センチまで近づかないと読めないくらいの強い近視である。6カ月もあれば正常な視力に回復するとのことだが、本当に裸眼の生活ができるのだろうか? 半信半疑でまずは角膜の屈折度を測る屈折検査を受ける。双眼鏡状の機械の前に座り中を覗き込むと気球や赤い屋根の家が見える、眼鏡やコンタクトレンズを購入するときに受けるあの検査だ。続いて、検査では同心円を角膜に反射させて、角膜の形状を測定する角膜形状解析。さらに眼圧測定、涙液量測定、視力測定と続く。また角膜は5つの層からできているが、その一番内側にある角膜内皮細胞の状態を調べる角膜内皮検査を行った。

角膜形状測定装置で角膜の出っ張り具合を測定(画像クリックで拡大)

かなり出っ張りが確認された私の角膜(画像クリックで拡大) 角膜内皮細胞の形状が目で確認できる(画像クリックで拡大)