ネットの世界では新規ユーザーが急増しているのかも

 「現代用語の基礎知識」(自由国民社)は2005年版以降、ネットに由来する新語を「はてなダイアリーキーワード」から選んで掲載しているが、2008年版で新規に掲載され、注目されているキーワードに「ググレカス」がある。

 掲示板などでは「ワンセグって何?」といったつまらない質問が出ると「ググレカス」とだけ返答される。「ググレカス」とは、ネットで検索すればすぐに分かる質問に対する決まり文句で、「ググれ(グーグルで検索しろ)、このカス野郎」の意味なのだ。

 「ググレカス」が広まった背景には、増えつつある「教えて君」の存在がある。「教えて君」とは、過去ログを読んだり、自分でちょっと調べれば済むことをいちいち質問する人のことで、自分で調べようとしない態度がネットユーザーの反感を買う。

 「2ちゃんねる」のVIP板のように流れが速い掲示板では、「今北産業」という言葉が使われる。「今北産業」は、「今この掲示板に来たばかりで話の流れが分からないから三行で説明してくれ」という意味だ。

「はてなダイアリー日記」では「現代用語の基礎知識2008」掲載のはてなダイアリーキーワードがアナウンスされている

 「ググレカス」が注目されたのは、ネットの殺伐とした風潮が背景にあるが、「ググレカス」を解説した冗談が広がったことも理由の1つだ。フリー百科事典の「ウィキペディア」にも、「Wikipedia:削除された悪ふざけとナンセンス/ググレカス」という項目があり、ググレカスの生涯が解説されている。

ググレカス(Gugurecus, 生没年未詳)は、架空の偉人。古代ローマの思想家。

帝政ローマの時代に現在のアルバニアあたりで生まれたといわれている。父は役人で、家の巨大な書斎にはあらゆる本が並べられていた。このため物心ついた頃から興味を持ったものは何でも検索する習慣がつき、13歳頃からはほぼ一日中図書館で過ごすようになった。それ以来さまざまな発見をしては、それを地元の図書館で検索するという日々を続けていた。

 もちろん、この解説は創作。そしてこの「ググレカス」は、「無蝕童帝ウプレカス」から派生したものだ。

ファイルなどをインターネット上にアップロードすることを電子掲示板上では「うpる」と表現するが、まれに「さっさと画像をうpれカス(早くファイルをアップロードしろ)」といった煽りが書き込まれることがある。ふたば☆ちゃんねるの二次元裏掲示板においてこの煽り文句をネタとして昇華され、古代ローマ風の人物に仕立て上げたのが「ウプレカス」の始まりである。頭に付いた「無蝕童帝」は「無職童貞」を意味した煽り文句である。ウプレカスの誕生後、「宰相ググレカス(ググれカス)」「将軍マジレス」など、掲示板上で使われる言葉を古代ローマ風の人物に仕立てたキャラクターが数多く生まれ、相関図が作られるほどのブームとなった。

無蝕童帝ウプレカスの相関図。ググレカスは登場人物の1人にすぎなかった

 話題の発端と見られるのが、「奴の名はウプレカス・・・。 : 二次元裏@ふたば」だが、この日付を見ると「05/07/26(火)14:11」となっている。関連の「ググレカス」が話題になったのは2005年から2006年。「ググレカス」のアスキーアートが話題になったのも、「ウィキペディア」にあるように、2006年3月の1週間程度にすぎなかった。

 なぜ、そんな古いネタが今頃話題になったのだろう。現代用語の基礎知識への掲載がきっかけとなったのか、2007年11月23日のはてなブックマークの人気では「ググレカス」を含む冗談人名アスキーアートが注目された。話題の対象は「2ちゃんねる」のまとめサイトだが、その元になる2ちゃんねるの掲示板も2007年11月17日以降のことなので、まるでごく最近のネタのリアクションのようだ。1、2年前のネットの話題を知らない新規利用者が多数ネットの世界に流れ込んだためだろう。

 新しいネットユーザーが増え、彼らが発する基本的な疑問にうんざりしている古参のネットユーザーの気持ちが「ググレカス」に表現されているかもしれない。

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。