数多くのバラエティ番組を手がけてきた放送作家の山名氏が、話題の番組を題材にビジネスで役立つ発想方法を紹介する。

 今回、取り上げるのは『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日系列・火曜20時)である。

 この番組がヒットした根本の理由は、そのテーマの新しさにある。それまでにも、健康情報番組はいろいろあったが、ここまで医学や病気に正面から取り組んだ番組は、NHK以外にはなかった。

 テーマが斬新。それは当然、ヒットの可能性を秘めている。だが、それだけでヒットするわけではない。大切なのは、そのテーマをどう見せていくかの「仕掛け」である。

 『家庭の医学』の場合、病気というテーマに対し、まずこんなコンセプトが考えられたという。

 「健康違反者講習」

 交通違反を重ねて免停になると、再教育を受けさせられる。その中で、交通違反を犯したことが原因により、人生がメチャクチャになってしまう、というドラマを見せられる。これがちょっとどうかと思うほど怖いそうだ。こんな悲惨な人生にならないよう、もう違反はしないようにしましょう。そう、「恐怖」によって教育するのである。『家庭の医学』もまた、日頃、自分の健康に対して無頓着な人々を「健康違反者」と見なし、恐怖をもって、病気というテーマを伝えようとしたのである。

 「恐怖」という点において、この番組にはもう一つ優れた仕掛けがある。

 「ホラーのプロットを移植」

 ホラー映画を見ていて怖いのは、殺人鬼や悪霊が登場するクライマックスではない。むしろ、それら恐怖の予兆や、忍び寄る影である。来るか来るか……来ない。来るか来るか……来ない。その積み重ねが、クライマックスの衝撃度を高めていく。

 『家庭の医学』でも、同じ手法が使われている。主人公の身に起きる小さな異変=初期症状の数々。主人公はその小さな異変に気づかない。あるいは気づいても、さして深刻に考えない。そんなある日、突然、悲劇がやってくる。まさにホラー映画である。

 『家庭の医学』で用いられたプロットは決して目新しいものではない。むしろ、古典的なものである。しかし、実はそれが、深刻な病を発病するプロセスに似ていると発見した瞬間、新たな価値をもった。病気というテーマを伝えるための、効果的な仕掛けとなったのである。

 コメディ、ミステリー、サスペンス、ラブストーリー。どんなジャンルにも、古典的なプロットがある。確かにそれらのプロットは、手垢にまみれ、今やドラマの中では使いづらいかもしれない。だが、見方を変えれば、それは人々にたっぷり刷り込まれている、ということである。だから、『家庭の医学』の例でもわかるように、古典的なプロットも、別フィールドに移植すれば、新たな効果を発揮する。そのためには、まず古典的なプロットを自分なりに抽出し、ストックしておくことが大切なのである。

<格言>

ドラマの古典的なプロットと自分の仕事に似ているポイントはないか、探してみるべし。

■関連情報
『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』の公式サイト:http://www.asahi.co.jp/hospital/

著者

山名宏和(やまな ひろかず)

放送作家。古舘プロジェクト所属。1967年生まれ。現在、『ザ!鉄腕!DASH!!』『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』『全国一斉! 日本人テスト』など、 十数本もの番組の構成を手がける。著書『大人の宿題』(サンマーク出版刊)、『だから直接聞いてみた』(宝島社刊)が好評発売中。『毎日新聞』『サイゾー』でも連載を担当。