「嫁のメシがまずい」動画が感動と共感を呼んだ

 アニメ主題歌や映画予告編の動画に本来のせりふと全然違うテロップを付けたパロディー作品を「YouTube」や「ニコニコ動画」でよく見かける。こうした、動画・音声・画像素材を個人の趣味で合成・再構成した動画作品はMAD(マッド)またはMADムービーと呼ばれるが、最近話題なのは、PS2用ゲームソフト「ACE COMBAT ZERO」オープニング字幕MAD「嫁のメシがまずい」だ。著作権上問題があると思うので、この場でリンク紹介するわけにはいかないが、まあ、ご覧になりたい方は、「YouTube」で検索すると見つけることができるのではないか。

 緊迫した戦闘シーンの映像に付けられたテロップはこんな感じだ。元の映像のせりふを微妙に生かしているところが面白く、きれいにオチもついている。

嫁の料理か
ああ食ってる
凄く不味い
そう洒落にならない味だ
知っているか?
メシマズ嫁は3つに分けられる
不器用な奴
味音痴な奴
いいかげんな奴

 このテロップのネタ元はすべて「2ちゃんねる」のスレッド「嫁のメシがまずい」だ。コラム執筆時点では、「【秘蔵の日本酒】嫁のメシがまずい 62皿目【嫁の料理酒】」というスレッドが立てられていた。タイトルにある「62皿目」は同じテーマのスレッドが62まで続いたことを示している。1つのスレッドには1000件まで投稿できることを考えるとかなりの長寿(?)と言えるだろう。

「YouTube」を「嫁のメシがまずい」で検索するといくつか、パロディー的なマッシュアップ映像(MAD)が見つかる(画像クリックで拡大)

まずいメシに込められた奥さんの愛情

 「嫁のメシがまずい」の書き込みは、奥さんがせっかく愛情を込めて作ってくれた食事をまずいというのが失礼なことは重々承知という上での既婚男性のボヤキだ。既婚男性なのだから大人である。大人のユーモアとして「メシマズ」を読むのが正しい読み方だと言えるだろう。これまでのメシマズ掲示板の長い歴史は、冒頭に提示されている「メシマズ嫁を持つ夫達の日々 : 「嫁のメシがまずい」まとめ」ブログに整理されている。読んでいくとなかなか味わい深い。

 「鯖の水煮」にはこういう話があった。

697 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2007/09/17(月) 03:15:29
某スレに誤爆したのだがこちらに張り直す。すまん。

昨晩の話なのだが、「鯖の水煮」ってだけの名前から
本当に「 水 で 煮 た だ け 」の鯖を出された。
味付け、臭み止め等一切無し・・・orz

「味見はしたのかい?」と聞いたら、
「シンプルだし間違いはないから♪(だから味見はしてないよ)」

食べてみてくれ、といったが断固として喰ってくれなかった・・・。

 沖縄料理に塩水で魚を煮る「マース煮」という料理がある。イタリア料理にも「アクアパッツア」という魚の水煮がある。どちらも鯖でもできないことはないので、実際に食べてみたらおいしいかもしれない。

 もう一例、「ゴーヤスムージー旦那」も似たような感じだ。

何か味のオアシスが欲しいと思って野菜だけのサラダ食いたいといったら・・。
緑色の液体が出てきた。
サラダと言ったのにと思いつつ飲んでみたら・・。
ゴーヤのツブツブ感が残ったままの生ゴーヤスムージーみたいなものだった。
うさぎになった気分だ。しかもちょニガイ。
氷も入っていたが、ご丁寧にもゴーヤの絞り汁を凍らしたものだったorz

 沖縄では、これはそのままゴーヤージュースとして売られている。健康にいいとして愛飲している人も多いくらいだ。

 というように、ポジティブにもとらえられる料理がいろいろある。読んでいくと、旦那さんは嫌がっているが、それもアリかもしれないなと思える料理もある。奥さんもいろいろ工夫して愛情を込めているのだ。

奥さんだって言いたい「旦那のメシはまずい」

 こうしたケースは旦那さんだけではなくて、奥さんにだってある。恋愛・結婚・離婚といった話題がテーマの「大手小町」の掲示板「発言小町」には、ずばり「夫においしいものを作って欲しい」というトピックがある。

夫も料理をしますが、できる料理(?)は、
・野菜炒め(にんにくが焦げ(或いは生焼け)、野菜に火が通っていないこともよくある)
・味噌汁(味噌が異常に薄い)
・ゆで加減にムラのある麺類
だけです。
正直、どれもとても不味いです。

月に一度程度ですが、私が疲れて、食事の用意が遅くなった時に、夫が用意してくれることがあるのですが、何度作ってももあまりに上達してないし、私は1食抜かしても大丈夫なので、近頃は「私はいらない」と断っています。

 現実の夫婦生活はなかなか厳しいといったところ。

 それしても、最近のネットを見ていると、奥さんや旦那さん、恋人、婚約者など、身近な人間関係なのに直接伝えられず、ネットにそっと愚痴をこぼすという傾向が出てきている。匿名と言うと名前を伏せて悪いことするようなイメージがあるせいだろうか。軽く愚痴を聞いてもらえる、SNSほど身近過ぎないコミュニケーションもネットには求められているようだ。

匿名で日記が書ける「はてな匿名ダイアリー」は、変わったブログの試みとして、今年の「アルファブロガーコンテスト」にもノミネートされている

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。