久しぶりの明石家さんま主演ドラマが始まっている。『ハタチの恋人』。日曜9時TBS。さんまと長澤まさみのドラマだ。

 視聴率は低い。

 初回視聴率13%で、2話は10%、3話ではついに10%を切った。ちょっとやばいですね。立ち上がり2週から3週というところで見れば、秋の14ドラマ中11位というポジションだ。下には、反町隆史の『ドリーム☆アゲイン』、上川隆也の『スワンの馬鹿』、長瀬智也の『歌姫』の3つがあるばかりだ。

 ドラマの内容は、50歳のサラリーマンさんまが、20歳の女子大生長澤まさみにときめくというドラマです。長澤まさみが昔の恋人とそっくりで、それにさんまが惹かれて、という設定である。いろいろと無理があるドラマで、まあドラマは無理があるからおもしろいんですが、このドラマの気になる無理は長澤まさみとさんまの年齢差なんかじゃなくて、そんなの気になりませんよ、「さんまが、さんまのキャラクターのまま出演しているけれど、役がしがないサラリーマン」というところなんだな。明石家さんまという存在は、日本のテレビの真ん中に存在し続けて20年で、その人にテレビで「こづかい3万円で大変なんや」と言われても見てるほうはどうしていいかわからない。たぶん、そこをおもしろいとおもえないと入っていけなくて、そういう人が多いんでしょう。

 さんま主演でも視聴率が取れないところが21世紀のドラマのつらいところだ。

 かつてはさんま主演ドラマは大ヒットした。1986年の『男女七人夏物語』と翌1987年の『男女七人秋物語』とセットで大ヒットだった。これが若い男女が、恋愛ドラマを見るきっかけになった。それ以前、日本のテレビは家族で見るものだったので、ドラマといえばホームドラマだった。極端に言えば、ね。若者が見るのは刑事ドラマか学園ドラマでした。青春ドラマってのもあったけど、恋愛が中心にはなかったですね。

 バブル好景気と軌を一にして、消費することがかっこいい時代になり、テレビは個人で見るものになり、そこから「ひっついたり離れたりする恋愛ドラマ」がヒットの中心になっていった。

『男女七人秋物語』は最高視聴率36%、平均30%という大人気ドラマだった。平均30%というのはもう今では考えられない熱中ぶりですね。ちょうど20年前の1987年は、まだまだ日本人も真面目だったということだろう。1987年だと、いい企業は週休2日だったけど、ふつうの人は土曜も働いて週休1日でした。男女七人物語の男女比率も、男3に対して女4で、いまとなれば不思議な感じがします。いまならふつう女3に男4になるはずだ。ワゴンに乗って世界を旅しながら恋愛していくバラエティ『あいのり』では男4女3だ。女4男3だと落ち着かない感じがするのは、もう僕たちは昭和の空気がわからなくなってるからですね。

 男女七人をきっかけとなって始まった空前の恋愛ドラマ時代は、1991年の『東京ラブストーリー』から調子づいて、90年代を通して続いた。

 さんまは『男女七人秋物語』のあとしばらくドラマに出ず、次に出たのは8年後の1995年『恋も2度目なら』である。浅田美代子、羽野晶紀、佐藤浩市らとの共演。平均視聴率は18.9%。それから立て続けに主演する。並べるとこうなる。

1995年冬『恋も2度目なら』
1996年春『その気になるまで』
1997年冬『恋のバカンス』
1998年夏『世界で一番パパが好き』
1999年夏『甘い生活』

 平均視聴率はだいたい15%から19%くらい。爆発的なヒットではないが、でも安定した数字である。ただ最後の1999年の『甘い生活』は(正しくは『甘い生活。 La dolce vita』)平均12.7%で、最後は下り坂ですね。それから3年のブランクののち2002年春に木村拓哉との共演で『空から降る一億の星』に主演、これは平均視聴率20%を越えた。ただまあこれは木村拓哉の持ち数字がずいぶん入っていますね。

 連続ドラマそのものの制作本数は1999年がピークでそれからはどんどん減っている。若い女性がドラマを見なくなったってことでしょう。

 いま人気あるドラマは、イケメンが出ていること、緊張した連続性を持たせないこと、に特徴がある。次々とどうなるんだろう、というドラマは視聴率が上がらないのだ。途中から見てもわかるし、最後まで見なくても中途半端な気分にはならない。そういうドラマの時代なわけですね。ありていに言えば、人はドラマ性をドラマに求めくなっていってるのだ。まあドラマ性のあるドラマを提供しすぎたので、いま冷ましてる時代だ、と言えるかもしれない。ま、また、ドラマを求める時代は来るでしょう。それにテレビドラマが応えるのかどうかはわかりませんが。

■関連情報
 ・ハタチの恋人の公式サイト:http://www.tbs.co.jp/20koibito/

※視聴率はビデオリサーチ関東地区調べ

著 者

堀井 憲一郎(ほりい けんいちろう)

堀井 憲一郎

1958年2月9日生まれ。京都市出身。コラムニスト。膨大でち密な調査をもとに、軽やかなコラムを書く文筆家。TVウオッチャーとしてのテレビラジオ出演も数々。落語とテレビに詳しい。趣味は草野球。阪神タイガースファン。花火師の免許も持つ。週刊文春にて「ホリイのずんずん調査」を長期連載中(1995年4月〜)。ほかに月刊誌「本」(講談社)、「ぴあ 関西版」(ぴあ)、落語専門誌「東京かわら版」などに連載を持つ。インターネットサイト「ドガッチ」内においてテレビに関するブログ「ホリイのテレビ研究所」をほぼ連日更新中。