今、全米で最も入手が難しく、しかもオークションで一番値段が高騰しているアーティストのチケットをご存知ですか? 発売開始からたった15分で売り切れ、eBayでは元の値段から6~10倍で取り引きされ、1枚1000ドル(12万円!)の価格が付くことも珍しくないという、超プレミアムなチケットです。一体どんな大物なんでしょうか?

 しかしその人物は、なんとテネシー出身のアイドル歌手、ハンナ・モンタナなのです。

オンライン・オークションのeBayでも、ハンナ・モンタナのコンサート・チケットはホット・アイテム(画像クリックで拡大)

 現在ツアーを行っているほかのミュージシャンといえば、久々の再結成でファンを喜ばせている「ザ・ポリス」や、今年14年ぶりのシングルを発表したベテランのビリー・ジョエル、「アメリカン・アイドル」でスターダムにのし上がった若手実力派ケリー・クラークソンなど、それこそ大物ばかり。それなのに彼らを蹴散らす勢いのハンナ・モンタナは、実はまだたったの14歳というから驚き。

 そもそも彼女は何者で、いかにしてここまで大ブレイクしたのでしょうか。

 まずややこしい話が、実はハンナは架空の人物だということ。彼女は「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」という子ども向けケーブルTVのディズニー・チャンネルが放映しているドラマのキャラクターです。さらに紛らわしいことにハンナちゃん、劇中でもマイリー・スチュワートという登場人物が「演じている」話題沸騰中のアイドル歌手なのです。自分がスターであることを周りに知られると何かと面倒だと感じているため、いつもは普段どおりの女の子として生活している……、という設定なのです。

ディズニー・チャンネル提供のハンナ・モンタナ公式サイト。主人公マイリーは、普段はブルネット(茶色い髪)で、ハンナに変身する時だけブロンドになるらしいです(画像クリックで拡大)

 で、そのハンナを演じるマイリーを、さらに演じているのが実在する若手女優、マイリー・サイラス。彼女自身もテネシー出身で、実年齢も14歳です。もう、頭の中が混乱してきませんか(笑)?

 何はともあれ2006年から放映が始まったこの「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」は、全米の小学校高学年ぐらいの年齢の女の子たちの間で大人気に。劇中でハンナが歌っている歌がそのままサウンド・トラックとして発売され、さらにアイドル歌手としてドラマの設定そのままに、今年の夏から全米ツアーも開始されました。

 しかし、このコンサートに行くのはもちろんハンナ・ファンである10~12歳といった女の子。彼女たちは子どもとティーン・エイジャーの中間(英語でいうと“between”)ということで「トゥイーン」世代とも呼ばれています。もちろん高額のチケットなど自分では買えません。

セントルイスでもハンナ・モンタナのコンサートがあったのですが、やっぱりチケットが高額でそれがニュースとしても大きく取り上げられていました(画像クリックで拡大)

 でも彼女たちは大人たちにとって、ちょっと「おませ」になって、でもまだ思春期の反抗期にも突入していないという、まさにかわいいさかりです。親はもちろんのこと、孫に甘いであろうおじいちゃん、おばあちゃん。彼らはいわゆるベビー・ブーム時代に生まれ育ち、経済的にも余裕のある世代だといわれています。目に入れても痛くない孫のためなら、数百ドルもするコンサート・チケットだって買ってもらえるでしょう、そりゃあ。

とあるコンサート・チケット取引サイトの、人気ランキング。ザ・ポリス、ビリー・ジョエル、ケリー・クラークソンをしのいで堂々の1位です(画像クリックで拡大)

 自分の後ろに協力を惜しまないスポンサーがいるトゥイーン世代、もう怖いものナシ(笑)。彼女たちはその愛らしさで、今のアメリカの音楽市場を支えているのかもしれませんねぇ……。

著者

クローニン真木(くろーにん まき)

 海外生活が人生の半分を超えてしまった、主婦&看護師兼ライター。日本人アイデンティティーを保持していると信じつつも、近年めっきり周囲からは否定されつつある。現在2児の母で子育てに奮闘しつつ、Narinari.comで執筆を展開。著書に「アメリカの弁護士は救急車を追いかける―アメリカの不思議なジョーシキ114」(宝島社文庫)。現在、月刊誌「この映画がすごい!」(宝島社)、「TOEIC Test プラス・マガジン」(リント)などに記事を提供している。日経トレンディネットでは以前に「アメリカ在住ミセス・マキのUSA『お茶の間』通信」を連載。