世界の辺境の地を回り、その土地にしかない酒を求めて旅をするルポライター江口まゆみさん。彼女がこれまで重ねてきたのは、かなり厳しい、それでいて思わず笑ってしまうハプニングありの旅だ。女性二人で行動しているというのに、タイでは外国人観光客は乗らないバンコク行きの深夜バスに乗り巨大ゴキブリ、ターミナルで突如現れる演説おじさんに遭遇。チリではイベント会場でステージに上がらされたかと思うと、酔った勢いで炭坑節を踊り爆笑を誘ったりという具合だ。そんな彼女のことを人は、酔っぱライターと呼ぶ。今回、2カ月間をかけて中国南部を旅した彼女の連載を開始するに当たり、なぜ江口まゆみさんが酔っぱライターになったのか、彼女は一体何者なのか、インタビューを試みた。(聞き手=江口さんの酒にまつわるエピソードを熟知している大学時代からの友人であり編集者・深澤真紀さん、本サイト担当編集者=Tnet)
Tnet 江口さんは、世界中でお酒にまつわる旅をされて、現地の人々と出会って、それをルポルタージュするばかりでなく、利き酒師やビアテイスターの認定も持つ、いわば「酒のプロ」でいらっしゃる。「酔っぱライター・江口まゆみ」という字面だけ見ると、丸く優しい感じもしますが、どちらかというと突撃レポート的なアプローチで、しかも、研究者的な視点からもお酒も含めて各地の風俗をレポートされています。失礼な言い方ですが、これはちょっと意外でした。
深澤 本を読むまでは、企画がすでにあって、辺境に無理矢理行かされてるライターさん、というイメージだったんですね。
Tnet はい、恥ずかしながら。
江口 わたしの場合は、行きたいから行ってます(笑)。ちなみに「酔っぱライター」というネーミングは、アフリカ取材を『BE-PAL』で連載したときに担当編集者が考えたもので、「自称・酔っぱライター」とよく言われますが、自称はしてないんです。
Tnet 雑誌の連載はご自分で企画される?
江口 いろいろですね。ただ、どんな仕事でも、わたしは最初の打ち合わせからいきなりビールを飲んだりするんですが、それが編集者には相当インパクトがあるみたいで。皆さんがコーヒーを飲んでるところでわたしだけビールをぐいぐい飲んでると、「この人は本当に酔っぱライターなんだ!」となんだかすごく感動されてしまう。
Tnet 本物だ!と(笑)。
江口 そのうえで、「こういう企画で…」と説明すると、すぐに編集長に話が通って、「翌週から連載を始めましょう」となることもありました。打ち合わせでビールを飲むと説得力があるみたいですね。
深澤 どんな打ち合わせでも、江口さんはビールがあればビールを飲むんです。わたしが編集をやっているときは、初めて会う相手との打ち合わせは「ちょっとやめてほしいな」と思うんですけど。
江口 キャラ的に「ここで飲んでおいた方がいいかな?」って(笑)。
深澤 いや、絶対に飲みたいから飲んでますよ。打ち合わせの店のメニューにビールがあると、目がキラッとしてるじゃないですか。
Tnet 「酔っぱライター」というネーミングは仕込んだ感じもあって、キャラを作っているものだと勘違いしていました。
深澤 「眼鏡アイドル時東ぁみ」みたいな?
江口 (笑)キャラづくりで飲んでるわけじゃなく、飲みたいから飲んでますね。
Tnet 毎日、欠かさず?
江口 1カ月に1日くらいは抜きますけど。ただ、「今日は飲まないぞ!」という決意するわけじゃなく、「あ〜今日は飲まなかったな」という感じ。
深澤 仕事が忙しくて昼ごはんを食べ損ねたとか、今日はお風呂に入らなかったとか、そういうレベルの話ですよね。うっかり飲まなかった。
Tnet うっかり飲まなかった(笑)?
江口 ええ、そんな感じですね。
深澤 あくまで結果論なんですね。
酒との一期一会を求める旅
Tnet 江口さんが酒を求めて旅をされるのは、土地ごとにお酒の種類や作りが違うことに興味があるわけですよね。まだ見ぬ酒を飲まずにはいられない、というか。
江口 ええ。酒は一期一会なんです。発酵1日目か3日目かというだけでも違うし、このおばさんが造っているからこの味であって、そのおばさんが造らないとこの味は出ないみたいなことがある。一生のうちに出会えるか出会えないかというような、一期一会の酒があるんですよ!











