暗幕越しに、雨の道を車が通り過ぎる音がする。女心と秋の空というけれど、ここのところの撮影は天候に恵まれない。本日のゲストは矢吹春奈さん。ただいま、午後3時。早朝からのロケで疲れているはずなのに、元気のよい挨拶に気持ちが晴れる。屋外での撮影をあきらめ、スタジオに大型ストロボをセットする。

大型ストロボ使用。左からレフ板にバウンスさせて2灯、トップから1灯でライティングした。背景は白のペーパーのみ。バック飛ばし用のストロボは入れずに、なりゆきでグレーの部分ができるように一部を遮光した

 本日のテスト機種はキヤノンのEOS40D。中級機にもかかわらず、シンクロ端子がついているのが役に立つ。小型のストロボは1/250秒以下で同調するが、大型ストロボは1/60秒以下となる。それでも本当に同調しているか心配で、フイルム時代はテスト現像の結果を待つしかなかった。デジタルなら液晶モニターで確認できる。オジサンの独り言だけれど、本当に仕事の効率が上がった。

 昔話をもう一つ。スタジオのセッティングも、10年前ならアシスタントかスタジオマン任せにできたが、いまでは巨匠をのぞけば自分でやるしかない。効率化の波は機材だけでなく、カメラマンの仕事のやり方にまで押し寄せている。重いレフ板を動かしたり、背景に紙をセットしたり…。「何でも自分でやりなさい」と子供のころ、叱られた記憶がよみがえる。わがままで、親の言うことをよく聞かなかった筆者は、人生の折り返し地点を過ぎてから苦労することになった。

 ようやくセッティング終了。湿度が高いせいもあり汗びっしょりだ。被写体に同情します。暑苦しいオジサンがカメラを構えている姿は、鬱陶しいに違いない。でも笑顔を向けなくてはいけないのだからね。春奈さんは優しい。キラキラと輝いた表情を、次々と見せてくれる。40Dは1Dsのシリーズに比べれば、シャッター音が軽く頼りない感じがする。直観的な印象だが、シャッターボタンを押してから実際に露光されるまでのタイムラグが長く感じられる。思ったところの表情を捕まえられない。せっかくの微笑みを、何度も逃すうちに、春奈さんも朝の疲れが出てきたようだ。場所を変えて気分転換を図ることにする。

スタジオの外階段で撮影。俯瞰気味に撮るときは、40Dのように機材が軽いと安心感がある。被写体の立場で考えても、上からゴツイ機種で見下ろされたのでは圧迫感があって、いい表情にならない。あえて軽量・小型の中級機を使うのがテクニックの一つ