ミニブログが「リア充」に説得力を持たせた

 この夏、ブログや「Twitter」で流行した「リア充(りあじゅう)」という言葉。もちろん、「リア・ディゾンを見つめて○○が充血」とかいう意味ではない。「リアル(現実生活)が充実している状態、またはそういう人」を略したもので、もともとは「2ちゃんねる」の「大学生活板」で使われ始めた。

「テクノラティ」で「キーワード『リア充』を含むブログのグラフ」を作成してみると、「リア充」という言葉が話題になったのは、ちょうど夏休みの時期だと分かる

 この「リア充」という言葉の背景には「ネットの世界に浸っているような人は、現実生活で満たされていない」というのを前提に、それをからかう心理がある。

オレの現実の生活はこんなに充実しているんだぞ!

 などとネットで自慢するのはむしろ“イタい”行為で、ブログや掲示板にそんなことを書いたりしたら、それこそ“妄想”とか“ネタ”扱いされるのがオチだった。本当に現実生活が充実しているとしても、それをわざわざネット上で公開する必要がないし、“現実生活で満たされていない”人への嫌みとも受け取られかねないからだ。

 ところが、“自虐ギャグ”的な使われ方をしていた「リア充」のニュアンスが、「twitter」に代表されるケータイ対応のミニブログの登場によって変化し始めた。デスクトップパソコンから離れたリアル(現実)の現場から、「オレ、今、デート中」とか、「プレゼンに成功したぜ」とかメッセージが入ると、なるほど説得力がある。

 ネットカルチャーを知らないミニブログユーザーがケータイを片手にネットの世界に乱入してきて、旧来のネットユーザーにリアル(本当)の「リア充」を見せつけている感じだろうか。「リア充」は、現実生活が満たされていない人間から見るとねたましいらしく、「リア充」をからかうネタもネットに増えている。面白いのが「ウィキペディア」のパロディーサイト「アンサイクロペディア」にある「リア充」の解説だ。

「リア充」の先に見える人間関係は?

 「アンサイクロペディア」の解説は“ネタ”にすぎないが、この解説の「さらにわかりやすいリア充判別」を読むと、あることに気づく。

7つ以上チェックならリア充である。
  • 恋人が複数いる。さらにはうまく両立している。
  • アドレス帳登録数が200件以上。収まりきらないため携帯が2つある
  • 一日の平均メール数が10以上
  • ほぼ毎日なんらかの形で電話する。但し仕事を除く
  • 誕生日イベントによくからみ、ホームパーティーを計画する
  • 昼食や夕食を友人と食べることが多い
  • 一日に二回以上飲みがある
  • 月に1回は欧米や韓国に旅行する
  • 他の人に堂々と言える趣味がある(ライブ三昧・サッカー観戦等)
  • 将来に希望が見出せる

 すべてのチェック項目で、(ケータイさえあれば)パソコンを必要としていないのだ。実はそこに、「リア充」の先にある、1つのトレンドが見える。

 明確な統計はないが、昨年末から話題になってきた「mixi疲れ」やミニブログの流行から見るに「ネットも楽しいけど、本当は“リア充”がいい」という、ネットとリアルのすみ分けがネットユーザーの中で進んでいるのではないだろうか。

 象徴的なのが、オタク評論家の岡田斗司夫さんによる「ココセレブ:Specialインタビュー:「自分を見つめ直す」……それがレコーディング・ダイエットです」での発言だ。

「仕事仲間がいれば、友だちなんて要りません。人間関係で必要なのは、仕事仲間と恋人と家族だけですから。それだけで、豊かな人生を送ることができますよ。

「友だちなんて作っているから、みんな無駄な時間を費やしているんですよ。友だちなんて、不良債権です。なので、ネットは便利です(笑)」

 SNSや出会い系サイトに代表されるように、ネットの魅力の1つは「友だちや恋人を作る」ということだった。しかし、岡田さんは、ネットを介して出会う、知り合うといった時代の終わりを予言しているのかもしれない。

 「リア充」の行き着くところは、“リアル”は現実の人間関係で完成し、ネットの世界での友達とは現実生活に結びつかない、心の交流のような関係を築くということになりそうだ。最後に、岡田氏の発言をもう1つ引用しておこう。

ブログに書くのは不特定多数の見えない友だち(=読者)に出すメールなんですよ。

筆者紹介 佐藤 信正(さとう・のぶまさ)
テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。