今回斬るのは「ウルフルズ」「宇浦冴香」「KREVA」。和製ファンクロックといえるウルフルズのサウンドは、マーティの耳にはどう聴こえるのか。宇浦冴香のハイトーンボイスに隠された秘密とは。そしてKREVAとスピッツのコラボレーション作について語ります。

なお現在発売中の「日経エンタテインメント!」8月号(表紙・戸田恵梨香)では、「アンジェラ・アキ」への愛情と新曲への不満、「スキマスイッチ」「ポルノグラフィティ」のルーツを分析しています。
また8月4日発売の9月号(表紙・井上真央)では「浜崎あゆみ」「木村カエラ」「RYUKYUDISKO」を斬る予定です。


 今回はまずウルフルズの新曲『両方 For You』を聴いてみたんだけど、僕はやっぱり外国人なんだな、と久々に実感しました。最初聴いたときは、どう受け止めればいいか、分からなかったですから…。最近は僕の耳も日本人に近くなってきたみたいで、こんなことはほとんどなかったんだけど…。

ウルフルズ
『両方 For You』
夏の高校野球統一テーマソング。「トータス松本とか名前もふざけてるじゃん。こんなにいい曲を聴かせてくれるのに、何のため?って思っちゃいます」。

 何に驚いたかってうと、まず、この連載ではJ-POP界のいろんなアーティストを洋楽のアーティストにたとえてきたけど、ウルフルズはロックバンドなのに洋楽の影響が全く見つからないんだよね。

 あと、ウルフルズって歌詞はコミカルで遊び心が満載だけど、サウンド自体はすごくちゃんとしてるじゃん。メロディーは歌謡曲の王道で分かりやすいし。コミカルさとまじめさが混じっているのは洋楽ではありえないです。なんでフザけた部分を入れる必要があるのか、全然飲み込めませんでした。

 アメリカにもウケ狙いのパロディーソングをやってる人はいるけど、サウンド面はあまり力を入れていない人が多いし、ほとんどが一発屋で長続きしない。でもウルフルズは、コミカルではあるけど爆笑ではないし、もっと歌詞の意味を大事にしてて、感情をじっくり聴かせるサウンドの作りだから、笑えるのに何度聴いても飽きさせないんだと思います。

 ウルフルズみたいな存在がアメリカにいないのは、アーティストとファンの距離感の違いからなのかもしれないね。日本のアーティストはどんなに大物でも、ライブでお客さんを普通に笑わせたりして、ファンとの距離を縮めようとするじゃん。

 このウルフルズの新曲も全然かっこつけてなくて、「隣に住んでるお兄ちゃん」って感じのイメージがリアルに伝わってくる。でもアメリカでは逆で、大物ほど距離感を広げようとします。だからウルフルズは外国人の僕にとってはすごく新鮮。『明日があるさ』くらいしか知らなかったけど、これを機会にもっとウルフルズのことを研究したいなと思いました。

魔法のハイトーンボイスのわけ

 宇浦冴香の一番の魅力は、曲を聴いた瞬間に彼女だって分かる、個性的な声です。特にハイトーンが普通の人と違う。結構高い音程なのに、裏声ではないし、叫び声でもない。すごくくすぐられる魔法みたいな声です。

 新曲『マイミライ』は、前作『Sha la la』に続いて、B’zの稲葉(浩志)さんの作詞作曲/プロデュースなんだけど、その味があちこちに入ってます。特に、ハモりのときの音と音の距離間。よくB’zの曲でも稲葉さんがオーバーダビングを使って自分ひとりでハモってるけど、この曲のハーモニーの音程の選び方は、すごく稲葉さんっぽいです。

宇浦冴香
『マイミライ』
アニメ『結界師』エンディングテーマ。「1つひとつの楽器の音色がしっかりと分離しているところは、さすがB'zチームのレコーディング技術と思いました」。

 1つだけ残念なのは、途中のギターソロが曲のバランスから考えると長過ぎるってことです。ギターのプレイ自体は素晴らしかったんだけど、個人的には冴香ちゃんの声をもっと聴きたかったかな。J-POPには、ギターソロの長い曲が多いですね。ひょっとしたら、カラオケのパチパチタイム用?(笑)

 KREVAの新曲『くればいいのに』には、ゲストボーカルとしてスピッツの草野マサムネが参加してるけど、こういうコラボレーションが実現できるのは、J-POPシーンのいいところだよね。洋楽だと、ジャンル同士の壁が厚いし、アーティストも個人主義の傾向が強いから、ジャンルを超えたコラボレーションはなかなか実現しづらい。でも、この曲では、KREVAの癒し系なラップと、草野さんのポップス系のパートがすごく自然に融合してると思います。

KREVA
『くればいいのに』
スピッツの草野マサムネがゲスト参加。「ラップとは相性が悪そうな人にオファーして融合を成功させる想像力は、名前どおり“クレバー”です(笑)」。

 あと自分の名前とタイトルを引っかけてるのもクール。だからタイトルだけで感激でした。僕のダジャレのレベルが低いからかもしれないけど(笑)。

 でも、こないだスタジオでギターを弾いてたとき、三本の弦がダメになって音が悪くなってたから、とっさに「“三弦じゃイヤ”(三軒茶屋)」って言ったら、みんなから「マーティ、レベルアップしたね!」ってほめられました(笑)。うれしかったな!

筆者紹介 マーティ・フリードマン
 アメリカ・ワシントンDC出身。世界でアルバム1000万枚を売り上げたメガデスの全盛期のギタリスト。J-POPに造詣が深く、日本語も堪能。現在は東京を拠点に、音楽活動のほか雑誌やテレビで活躍中。日経エンタテインメント!の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページは英語版日本語版がある。この春のヨーロッパツアーを収録したライブCDと、5月の日本公演を収録したライブDVDを8月22日に同時発売。

著者

マーティ・フリードマン

 90年代、ヘビーメタルバンド、メガデスのメンバーとなりアルバムセールスを1300万枚超えの世界的なスーパーバンドへと導いたギタリスト。その後、J-POPに興味を持ち、メガデスを脱退。活動の拠点を東京に移し、ミュージシャンやプロデューサーとして活動している。11年9月には好評のJ-POPカバーアルバム第2弾『TOKYO JUKEBOX2』を発売した。発売中のSMAPの最新アルバム『GIFT of SMAP』(ビクター)では、木村拓哉のソロ曲『La+LOVE&PEACE』の作・編曲とギター演奏を担当するなど、他のアーティストへの楽曲提供、アレンジ参加など多数。日本の音楽や日本語の魅力について、外国人やミュージシャンならではの視点で様々なメディアにおいて語っている。「日経エンタテインメント!」の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページはこちら