貴方が普段音楽を聴いているハードウエアは何だろう? 専用のコンポだろうか。移動の車中のカーオーディオ? 最近急激に増えているのが、PCで音楽を楽しんでいる人の割合だ。
そうしたスタイルを否定するつもりは毛頭ない。家の中にさまざまなデジタル家電があふれ、それでなくても機械を極力減らしたい昨今である。しかし「それではちょっと淋しいんじゃないの?」と思うのは、私だけではないはずだ。というのも、今日標準的なPCのオーディオ性能の貧弱さに、オーディオを評論する立場からすると「ちょっとねぇ……」と思わざるを得ないのである。
しかしそんな私の危惧(きぐ)も、オンキヨーの「HDオーディオコンピューター HDC-1.0」の登場で、きれいさっぱり氷解するかもしれない。これがなかなか侮(あなど)れない実力を有しているのである。
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| ▲ オンキヨーが2007年3月10日に発売した「HDオーディオコンピューター HDC-1.0」(実売価格18万4800円前後) 【画像をクリックすると拡大表示されます】 |
大阪府寝屋川市に拠点を置くオンキヨーは、スピーカーの開発・製造から創業したオーディオ専業メーカーだ。一昨年には、フランスの権威あるオーディオ専門誌において、同社の小型2ウェイスピーカー「D-312E」が、イギリス、ドイツ、イタリアなどの名立たるスピーカーをしのぐ高い評価を受けた(日本のスピーカーがヨーロッパで高く評価されること自体が非常にまれである)。
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▲ オンキヨーが2005年10月に発売した小型2ウェイスピーカー「D-312E」 【画像をクリックすると拡大表示されます】 |
そんな同社がPC関連機器を手掛けるに至ったのは、先見の明と言っていいだろう。近い将来、ハードディスクを利用した録音手段が普及し、カセットテープやMDにとって代わり、PCのオーディオ性能が重要視される時期が必ず来るという読みがあったわけだ。
1998年に、ISAスロット対応のサウンドボード「WAVIO Sound Engine Pro SE-70」を発売したことを皮切りに、PC対応デスクトップスピーカー、USBサウンドボード、ネットワークレシーバーなど、ここ10年ほどの間に次々と関連プロダクツをリリース。音にうるさいPCファンから支持されてきた。
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| ▲ オンキヨーが2006年5月に発売したオーディオPC「HDメディア・コンピューター HDC-7」 【画像をクリックすると拡大表示されます】 |
そうした勢いに乗って完成されたのが、2006年に発売されたオーディオPC「HDメディア・コンピューター HDC-7」であった。だがそれは、パソコンをベースに音質検討を施したもので、エンジニアたちは必ずしも納得してはいなかったようだ。かくいう私もそのパフォーマンスに接したことがあるが、腰高で線の細い音に、「これは先が思いやられるなぁ」と感じたほどであった。
しかし、先頃登場した「HDC-1.0」は断然違った。HDC-7がいわば“練習台”になったことで、さまざまな「大事なこと」に気付いたのだ。
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| ▲ 静音性を実現した「HDC-1.0」の筐体(製品情報ページより) 【画像をクリックすると拡大表示されます】 |
まずは筐体(きょうたい)をオーディオ的視点から設計。既存のPCケースの延長線上で作られていたHDC-7に対し、徹底的に防振処理と静音化を図った。HDC-1.0の筐体を開けてみればその徹底ぶりが分かる(カタログに写真が掲載されている)。ハードディスクの上面や空冷ファン用ダクトに防振テープが貼られており、光学ドライブユニット基板やケーブル類を防振材で浮かせたりしているのである。
通常このような処理は手作業で行われるため、面倒なので生産ラインからは嫌がられるのだが、本機に懸ける全社的な気合いがそれをよしとした。フロントパネルはアルミ製。コルク材を貼ったインシュレーターなど、まさしく全身本格オーディオ仕様なのだ。
開発陣は強調する。「振動しそうな要素を試聴を繰り返しながら一つひとつ対策していった結果、再生音の品位がどんどんと上がっていった」と。デジタル機器とて、アナログ的な処方がいかに効くかが再確認できたという。確かに空冷ファンの音は極めて静かだし、筐体の振動もほとんどないに等しい。これならばクラシックの古楽器のデリカシーも十分伝わってくるだろう。
一方で、PCとしての性能が犠牲になっているようでは本末転倒だ。もちろんその点についてもHDC-1.0は抜かりない。CPUは「インテルCore 2 Duo(1.66GHz)」で、メモリーは1GB、ハードディスク容量は120GBを積んでいる。よほど高度なゲームやビデオ編集でもしない限り、日常的なネット閲覧やメールのやりとり程度ならば、十分に事足りるスペックと言えよう。装備面も、USB2.0が前面に2ポート、後面に4ポート装備さ れている。
HDC-1.0がオーディオPCたる所以(ゆえん)は、付属の「CarryOn Music10」を使って、音楽CDの取込みや音楽配信サイトからのダウンロードが自在にでき、しかも多彩なファイル形式を一元管理できることにある。また、「CarryOn Music10」は「Gracenote MusicID」(音声データの波形を認識して曲名を取得できる機能)にも対応しているので、アナログ音楽データも簡単にストックできる。
レコードやカセットテープ、MDといったアナログオーディオの音源も簡単にライブラリー化でき、さまざまなエフェクト/イコライジング処理を付加することも可能。それをキーボードやマウスを介して操作するのでなく、双方向リモコンを使ってまさにオーディオ機器を操作するように操れるところがうれしい。
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| ▲ オンキヨーが運営する音楽配信サイト「e-onkyo music」 【画像をクリックすると拡大表示されます】 |
また、オンキヨーの関連サイト「e-onkyo music」がサポートしている「96kHzサンプリング/量子化ビット数24ビット」という高音質音楽配信のダウンロードにも対応しており、CDをしのぐハイクオリティーな音楽のライブラリー化と鑑賞が可能。一般的なオーディオ機器では成し得ない音楽生活が送れるというわけだ。
私はこのHDC-1.0の可能性に興味を持ち、デジタルARENAにおいてロングランレビューを行っていきたい。今後さまざまな角度からHDC-1.0のポテンシャルとパフォーマンスを掘り下げていくので、期待していただきたい。
| 筆者紹介 小原
由夫 おばら・よしお オーディオ&ビジュアル評論家。理工系大学卒業後、測定器エンジニア、AV専門誌の編集者を経て現在に至る。ハードからソフトまでの幅広い知識とそれに基づく評論、解説が支持を得ている。現在「nikkeibp.jp セカンドステージ」にて、「DVD 見方・聴き方・楽しみ方」を好評連載中。 |





















