1月30日に発売が開始されたWindows Vista効果で盛り上がりを見せたパソコン市場。しかし、その盛り上がりもつかの間、販売開始後の動きは鈍く、期待感だけが先行した感は否めない(関連記事)。さまざまな要因が考えられるが、これはソフトウエアの進化だけではパソコンは売れないことを示しているのではないだろうか。魅力的で革新的なハードウエアの登場なくして、パソコン市場の拡大はありえない。
そんな中、各社からVistaパソコンの第二世代となる夏モデルが登場してきた。国内で高いシェアを誇るNECは、従来のデスクトップ、ノートのカタチにとらわれない新スタイルPC「VALUESTAR N」の投入でテコ入れを図る。名前こそ同社のデスクトップであることを示すVALUESTARを冠するが、いわゆるこれまでの一体型デスクトップとは一線を画している。厚さ約40mmのスリムな本体にパソコンの機能を詰め込み、15.4型ワイド液晶ディスプレイも備えるデスクトップでもノートでもない新しいカタチだ。
一概に新しいカタチといっても、買う側はもちろん、作る側もパソコンはデスクトップかノートという風に固まった意識を壊すのは決して楽ではない。そこでNECは、入社したての新入社員に「VALUESTAR N」の商品企画を一から任せることにした。(三浦 善弘)
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| ■企画に行き詰まり感 |
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| ▲ NECパーソナルプロダクツ PC事業本部 商品企画本部 商品技術部の大石剛久氏。今年で入社3年目ながら、「VALUESTAR N」の商品企画を一から担当した |
矛先が向けられたのは入社したての大石剛久氏(現在27歳)。「大学の専攻は工学系だが、右も左もわからなかった」と語るように、最初は苦労の連続だった。上から言われたのは、「企画自体に行き詰まり感があり、(企画段階で)すぐにデスクトップかノートか、という既存のスタイルになる。どうしても寄り道ができずに、新しいものが生まれにくい」ということ。
入社試験の面接では、使っていたNECのパソコンについて「液晶が暗くて重い」と正直に批判した。パソコンに必要なものは何かと聞かれて、「デザインです」と即答したら、合格通知が届いたという。
入社したては先輩の後について、マーケティングや開発など現場を勉強した。
「なぜ企画を任せられたのかはわからない。聞くのは怖かった」。そう語る大石氏が企画を始めるに当たって、最初に言われたのは「1部屋1台」というコンセプトだけ。入社当時、パソコンの普及率は、すでに1家に1台は達成されており、普及率も頭打ちの状況だった。1部屋1台というコンセプトには、この状況の打破を狙う意味も含まれる。ユーザー調査やディスカッションなど、何をしてもいい、「1部屋1台に適したカタチのパソコン」を作ることが大石氏への上からの指令だった。
ただし、与えられたのはコンセプトだけで、制約は何もない。自由な代わりに、何をするにも「これでいいのか」という考えがつきまとったという。
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| ■「1部屋1台」に適した形を模索 |
どんなカタチが1部屋1台に適しているのか? 最初は多くのアイデアがあった。ミニPCやヒンジが2つあるノートなど。いろいろ考えたが、「これだったらデスクトップでいいのでは? ノートでいいのでは?」という考えに収束してしまった。「今あるカタチでいいじゃないか」と。
VALUESTAR Nのきょう体はパッと思い浮かんだものではない。ユーザー調査を繰り返し、デスクトップとノートのそれぞれのいいところを掘り下げた。それと同時に、両方の嫌われる理由も探り出した結果に生まれたのだ。
「デスクトップのいいところは、しっかりしたキーボードに代表される使いやすさ。逆に嫌われるのは大きすぎることと、分離型だとケーブルがいっぱいになって見た目が悪いこと。かつ、用途を考えたときに、デスクトップほど高性能なスペックはいらなという人は少なからずいる。一方のノートは、何と言ってコンパクトさはデスクトップにはないメリット。ノートが嫌われる理由としては、キーボードと画面が近すぎること。そのため、使うときの姿勢が嫌いな人がいることがユーザー調査からわかった」
名前こそNECのデスクトップを示すVALUESTARを冠するが、企画のスタートはデスクトップとノートの両方からアプローチしたと言える。
新シリーズということもあり、斬新さもほしかった。ただ、「斬新にしながら、奇抜にはならないように気をつけた」という。
新しいカタチのパソコンは、奇抜さばかりに目がいってしまい、色物として見られることが多い。それを防ぐために、企画の段階で何度も振り返ってチェックした。
「このカタチに落ち着くまでは半年間かかった。デザイン案は5、6個あった」
経験豊富な先輩たちと比べて企画の期間は長かった。開発がスタートしてしまえば、時間的な長さは変わらないが、それに至るまでは苦労が絶えなかったという。もちろん企画期間が長くなった分、開発期間は短くなった。
「普通のパソコンなら、デザインが二転三転することは少ない。VALUESTAR Nに関しては、最初はスタンドがなく、ただの箱だった。スタンドも今でこそフォトスタンドのタイプだが、液晶テレビのようなスタンド案もあった」。スタンドだけではない、キーボードの収納の仕方にも頭を悩ませた。マウスについても、キーボードにフラットポイントを付けてマウスレスで使えるようにするアイデアがあった。大石氏は「なかなかカタチが見えず、周りの先輩にいろいろと迷惑をかけた」と振り返る。
低姿勢ながら、カタチにはとことんこだわった。できあがったサンプルに「これでは薄く見えない。重く見える。カッコ悪くはないけれど、ユーザーに減点される。これはナチュラルな部屋にしかおけない」など納得できないところは、必ず修正した。
最終的には、「デスクトップとノートをブラッシュアップしていって、おいしいところをミックス。それに自分なりのアイデア(取っ手として使える「フレックスバー」や、液晶の裏に小物を収納できる「ガジェットポケット」を指挿して)を詰め込んでいったら、こういうカタチになった」
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| ▲ A4ノートの購入を考えているユーザーにもアピールするため、液晶はA4ノートの主流と同じ15.4型ワイドを備えた |













