「とかち」……帯広空港でも平野でも、牛乳でもない。少し前からネット上のコミュニティなどでで話題となっているこのキーワードは、北海道とはまったく関係のない、Xbox 360にて発売されたゲーム『アイドルマスター』がその出所だ。

今年1月25日に発売となったXbox 360のソフト。1人から最大3人のアイドルユニットとともに、1年間で芸能界のトップを目指すというシミュレーションゲームだ。メインキャラクターは10人登場する

 そもそものきっかけはこのゲームの動画が、一部のユーザーの手によってYouTubeなどの動画サイトにアップロードされたこと。その中で、登場キャラクターの「双海亜美・真美」が歌うとある曲の歌詞の「溶かしつくして」というフレーズが、「とかちつくちて」と聞こえ、その舌っ足らずな歌い方に萌える視聴者が続出。当時βテスト中だったニコニコ動画などを中心に「とかち」ブームに火がついた。

 この「とかち」映像には、当時のニコニコ動画では1日数十万のアクセスがあり、YouTubeにアップされている「とかちつくちて」の部分を連続で再生するように編集された動画が100万ヒットにも届きそうな勢いで、一般ユーザーにも視聴されている。

亜美・真美は双子だが、ステージ上では1人で出演するという設定。当の曲は『エージェント夜を往く』。「とかちつくちて」のほか、「乱れる悦びを…」のフレーズでコブシを回すような歌い方も聴いていて楽しい。ファンの愛称はもちろん「とかち」

 この『アイドルマスター』は、プレーヤーが芸能事務所のプロデューサーとなって、アイドルを育成していくというゲーム。事務所に所属するアイドル志望の女の子とともに、レッスンやオーディションによるTV出演をこなしながらファンを増やし、1年間という期間の中で彼女をトップアイドルに育て上げるのが目的だ。実力のあるものだけが生き残れる芸能界を、アイドルとともに二人三脚で駆けていくという内容は、いわゆる「恋愛」をテーマにしたギャルゲーなどとはまったく違ったサクセスストーリーを体感できる。

 このゲームでは、ファンが増えてアイドルのランクが上がれば、その晴れ姿をXbox 360のオンラインサービス「Xbox Live」上で公開できるというご褒美がある。このゲームが動画サイトを通じてヒットしている理由はここにあり、通常はトップランキングになってXbox Live上でしか公開できない自分のアイドルの晴れ姿を不特定多数のユーザーに見てもらいたいというのは、このゲームをプレイしている全員が必ず思うこと。見る側は、この「とかち」の動画をきっかけにこのゲームの存在や内容を知ることとなり、結果的にプロモーション効果も上げている。ゲームの動画をアップする行為は、当然ながら著作権法違反ではあるが、以上のような効果もあることからか、発売元のバンダイナムコは特にコメントはせず、動画が頻繁に消されるといった様子も今のところない。

アイドルたちが着る衣装が豊富なのも魅力。着せ替え気分でコーディネートできるのが楽しい。衣装やアイテムはゲーム中のファンから贈られてきたり、オンラインに接続して購入することもできる

 もともとはアーケードゲームで登場したこのゲームだったが、難易度がやや高めだったこともあって、大きなヒットにはいたらなかった。このXbox 360版も出荷約5万本と、ヒットというにはまだまだの数字だが、アーケード版より格段と遊びやすくなり、グラフィックの質も上がっている。何より、つんく♂の気分でアイドルをプロデュースしていくという内容は、これまでのゲームではあまり味わうことのできなかった新鮮な体験だ。現役・未体験ユーザーを巻き込んでの「アイマス・ムーブメント」の波に乗るなら今!

(C)窪岡俊之 (C)2003 2007 NBGI

筆者紹介 稲元 徹也(いなもと・てつや)
最初に買ったファミコンゲームはナムコの『ドルアーガの塔』でした。そんな世代とあれば、そろそろ「古参」と呼ばれても違和感がなくなった、業界歴十余年のゲームライター。この世代となっても現場的な仕事ばかりを受けつつ、それはそれで楽しんでおります。(有)ターニング・ポインツ所属。