メディアで報じられるアメリカ発のニュースというと、国際問題だったり最新技術だったり企業最前線だったり。でも、アメリカでもネットで普通に盛り上がっているのは、やっぱり日本と同じような身の回りの話題が中心。アメリカの“お茶の間”ではどんなことが話題になっているのか−−アメリカ在住の主婦兼ライターのウォール真木がレポートします。
それは、長女が小学校に上がりたての頃。アメリカの学校では給食か、自宅から持ってくるお弁当かを選べるのが普通です。お昼の時間になると生徒たちはカフェテリアに移動して、そのまま持ってきたお弁当を食べるか、お金を払って給食を買うか、どちらかが選べます。給食費は事前に支払っておいてもいいし、その日だけの分のお金をキャッシュで持っていってもOK。フレキシブルなところが、楽ですよね。
ちなみにウォール家はお弁当派。長女が小学校に上がる前に、
「スクールランチとお弁当、どっちがいい?」
とワタクシが不覚にも聞いてしまったのが運のツキ。娘は元気良く、
「毎日お弁当!」
と答えました。そして毎朝のお弁当作りが日課になってしまった母……(涙)。あぁ、聞かなきゃよかった。しかも最初は“アメリカ風のお弁当”にしてね、という長女のリクエストどおり、簡単なサンドイッチにリンゴ(丸ごと)とか、適当に作って渡していたのですが、これが全然食べて帰ってこない。彼女になぜなんだと問いただしてみると、
「やっぱりおいしくない。日本のお弁当がいい……」
と半ベソで訴える始末。がぁぁぁぁっ(汗)。結局、ウォール真木はそれからさらに早起きして、何品もおかずの入った手の込んだお弁当を、それこそ眠たい目をこすりながら準備することになったのです。もちろん、アメリカ。お弁当用の冷凍食品とかもありゃしないので、すべて手作りっ!
この苦労、いつか分かれよ、娘たち。
何はともあれ、長女はそれから毎日、学校に冷やご飯に卵焼き、ほうれん草のゴマ和えや佃煮がつまったお弁当箱を持参しております。しかし母にはさらなる心配が……。アメリカ人の子供たち、奇妙に映る純和風のランチを見て、何か言わないかしら?
それが原因で娘がイジメにあったりしないかしら? うーむ、大丈夫かなぁ。元からあまり学校のことを話さない長女なので、さらに気になる……。
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| ▲ 「Yoko」のカバー写真。作者のローズマリー・ウエルズはアメリカでも有名な絵本作家で、彼女の作品はアニメーションにもなって現在も放映されています。ほんわかとした落ち着いた絵柄とストーリーが人気 |
そんなある日、ボランティアで小学校の図書館に行く機会がありました。するとドアを開けてすぐ目に入る場所に、何やら絵本を発見。そのタイトルには大きく「Yoko」と日本語の名前が書かれています。気になってその中身を開いてみると、そこにはこんなストーリーが。
日本からアメリカに引っ越してきた主人公のヨーコは、ある朝、大好きなお寿司のお弁当をお母さんに作ってもらいました。それを持って大喜びで学校に行った彼女。しかしランチの時間に同級生の友達から、変な食べ物をランチに持ってきたと言われてしまいます。そんな彼女を先生は、おやつの時間になればみんなもう忘れてしまうでしょう、と慰めます。ところがおやつの時間に彼女が机の上に出したのは「小豆アイス」。これを見て、クラスメートはまたまた彼女を変なヤツだと馬鹿にしました。先生もヨーコの悲しそうな表情に心を痛め、食生活の違いを理解するために、何かいい方法がないかと考えます。そしてクラスで「インターナショナル・フード・フェスティバル」を開催することに。お話はその後、ヨーコにも日本食に興味のある友人ができ、それから毎日そのクラスメートとお弁当を交換する……というエンディングを迎えます。
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| ▲ 本の中でお母さんがお寿司を作ってくれる場面。フランス語にも翻訳されているんですねぇ |
この本を読み終えてウォール真木は、もしかしたらこの本がこうして今図書館に置かれているのは、理由があるんじゃないかと思わずにはいられませんでした。そして数日後、私が長女を迎えに行った時、私のその疑惑は確信に。私が教室に行くと、そこには教頭先生がおり、長女に向かって、
「お昼ごはんちゃんと食べた? アナタのランチはね、世界中で一番ゴージャスなランチなのよ」
と褒めてくれているじゃないですか。後で聞いた話ですが、お弁当の件で長女に対するイジメはなかったものの、珍しい食べ物に友達がよく「これなーに? これなーに?」と彼女の周りに集まっていたそう。きっと学校ぐるみで、長女が肩身の狭い思いをしないよう、先に手を打ってくれたんだ……。ううう、先生ありがとう〜(涙)。
それにしても、こんなアメリカのど真ん中で、もろ和食のお弁当を広げて食べる娘に、ここまでぴったりなテーマの絵本があるとは驚きでした。しかし探してみると、アメリカの絵本には本当にいろいろなテーマの子供向け絵本があることに気がついたのです。
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| ▲ ゲイのペンギンの心温まるストーリー「And Tango Makes Three」。ちなみに悲しい後日談なんですが、モデルとなったペンギンはその後、1匹がメスのペンギンと浮気して別れちゃったそうです……(涙) |
それら多くの絵本に共通するのは、異文化や人種の違う人々に対する偏見・差別という社会問題を直視しているということ。先の「Yoko」なんて、もろにそれをテーマにした絵本です。子供にとってはまだ難しいテーマを、ほどよくかみ砕いたストーリーは、シンプルながら強いメッセージを持ち合わせている感じがします。
そう言えば以前、ニューヨーク市セントラルパーク動物園に実在したペンギンのカップル。彼らを題材にした「And Tango Makes Three」という絵本があったのですが、これはなんとホモセクシュアルがテーマ(笑)。なんでもサイロとロイというオスのペンギン2匹はオス同士でありながら、いつしか夫婦として生活するようになり、飼育係が与えた卵を温めて、元気な赤ちゃんをかえしたりしたそう。周りのカップルとはちょっと違うけど、「ちゃんと同性愛者でも家族が作れるんだよー」とストーリーは語っているのです。
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| ▲ アメリカの子供たちは、離婚も真っ向から直視する!? 彼らの心の混乱を助けるためにも役立つ絵本がたくさんです |
社会問題と言えば、アメリカでは差別のほかにも「高い離婚率」というのがあります。子供にとっては両親が別れるというのはそうとうショックなこと。それを乗り切るために、また親が離婚について子供と話し合うきっかけになるように、それをテーマにした絵本もこれまた数多く出版されています。書店で児童セクションを眺めていた時、棚にずらりとこういった本が並べられていたのを発見した時は、さすがお国柄だなぁと感心したものです。
それにしても日本なら「子供には難しすぎる問題」として避けがちなテーマを、あえて偏見のない心を持っているうちに分かりやすく説明する。コレって結構大きな人生勉強の始まりとして、大切なのかもしれませんねぇ。
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筆者紹介 ウォール真木(うぉーる・まき) 海外生活がそろそろ人生の半分にリーチしかけている主婦兼ライター。主にインターネットからの情報で日本人のアイデンティティーを保持しているつもりだが、周囲からは否定されている。現在2児の母で子育てに奮闘しつつ、Narinari.comで執筆活動中である。著書に「アメリカの弁護士は救急車を追いかける―アメリカの不思議なジョーシキ114」(宝島社文庫) |
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