BD-ROMの生産は、ソニー・ミュージックマニュファクチュアリングの静岡工場が担当する。同工場は、世界で初めてCDを生産した記念すべき場所で、建物の入口にはその第1回発売タイトル「ビリー・ジョエル/ニューヨーク52番街」(品番/35DP1)の現物を用いたモニュメントが設営されている。
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▲ 静岡県吉田町にあるソニー・ミュージックマニュファクチュアリングの吉田工場 |
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| ▲ 吉田工場の入り口にあるCD発売記念のモニュメントには、1982年に発売された世界初のCDタイトル「ビリー・ジョエル/ニューヨーク52番街」が飾られている | |
ここはCD、DVDの生産を主体とした工場で、BDの生産設備はつい最近加わった。現在は、1層(25GB)と2層(50GB)の2種類がプレスできる状況にある。ソニーPCLなどでオーサリングされたマスターディスクが、この静岡工場でマスタリング、スタンパー製作、レプリケーション(プレス)、レーベル印刷、パッキングなどを経て、晴れて私たちの手元に届けられるパッケージソフトとなるのである。
マスタリングは、「PTM(フェイズ・トランジション・マスタリング)」と呼ばれる、ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ製のマシン「PTR-3000」を用いた信号のピット成型工程を指す。BDのピットはDVDの4〜5倍の密度というから、従来のようなフォトレジスト(感光性を持つ有機物質)による光記録では困難。そこで、青紫色半導体レーザーを活用した微細加工技術による相変化無機レジスト、いわゆる熱記録によるピット成型を行っている。ここから作られたシリコンウエハー原盤がマスターディスクとなる。
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| ▲ ソニー・ミュージックマニュファクチュアリングのBD-ROM生産ライン |
このPTM工程は、従来のDVDのマスタリングの12工程から7工程を簡略化することができ、全5工程という短縮化を実現している。これにより、品質の安定化と環境面への配慮(廃棄物の削減など)が達成されたという。
ソニーではこのPTR-3000を外販しており、2006年10月時点で、米国に7システム、欧州に1システム、日本では2システムが稼働中で、近々さらに2システムが追加される予定だ。
完成したシリコンウエハー原盤は、続いて「レプリケーション」と呼ばれるプレス生産工程に移される。ここで肝心なのが、スパッタリングという銀合金の反射膜の射出成形の後、その上に施すUV樹脂によるカバー層の生成である。
具体的なその生成は、円弧を描くように滴下した液体を、高速回転時の遠心力でディスク表面に均一に塗布する技術だ。このわずか0.1mmのカバー層の平滑性を保つノウハウは並大抵ではない。この方法を「スピン法」という。
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| ▲ BD-ROM生産ラインのインジェクションモールド(射出成型器) | ▲ わずか0.1mmというカバー層を生成するため、UV樹脂を吐出して不要な樹脂を振り切り、紫外線を照射して硬化させる「スピン法」を採用 |
ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ 技術推進部門の岡田隆雄部門長によれば、シート法という貼り合わせの方法も併せて検討したという。
「カバー層の厚みを均一に保つという点ではシート法にメリットがありますが、材料費と品質のコントロールという点ではスピン法にメリットがあります。問題は、樹脂をコートする際に、遠心力によって内周部で薄くなったり、外周部が盛り上がったりしがちな点です。私たちは、センター孔に独自のキャップを用いることでその問題をクリアーしました」
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| ▲ ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ 技術推進部門の岡田隆雄部門長 | ▲ ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ静岡事業所 開発3部プロセス技術マネージャーの吉村英昭氏 |
「生産上で最も気を使うのが、2層式の場合は、スタンパーのエンボス処理と表面カバーのハードコートといえます。それぞれの工程で回転させるスピードの微妙な調整が必要で、ここが私たちの生産システムのキーになります」と話すのは、ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ静岡事業所の技術開発部門、開発3部プロセス技術マネージャーの吉村英昭氏だ。
装置は、射出成形、冷却、反射膜、カバー層、検査取出しの5つのブロックで構成される。2層50GBをプレスするマシンでは、これに2層目製作ユニットが追加され、1層目と同じ工程がいくつか重なる。
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▲ 2層ディスク製作時の中間層生成プロセス。反射膜を成型した基板にUV樹脂を塗布し、赤外線を照射しながら樹脂を振り切る |
ここ静岡工場の現状の生産能力は、単層/2層で若干時間が異なるが、1枚当たり5〜6秒で、歩留まりは約80%という。1台当たり1日で1万2000枚の生産能力があるようだ。静岡工場ではこのマシンが3台稼働している。ソニー・ミュージックマニュファクチュアリングの経営戦略部門・部門長の室岡隆夫さんによれば、この生産性の改善が急務という。
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| ▲ ソニー・ミュージックマニュファクチュアリング 経営戦略部門の室岡隆夫部門長(写真左)と小原氏 |
「早く90%、できれば現在のDVD並みの95%の歩留まりまで持っていくのが、私たちの目下の課題ですね。また、HD DVDと比較して、DVDの生産ラインが活用できないのはウィークポイントではないかという指摘がありますが、生産枚数や売上げの今後の増進で、設備の減価償却は早期に見込めるという判断をしています」
現在ソニーグループでは、この静岡工場とヨーロッパの工場とを合わせて、月産500万枚の生産能力を有しているという。これに米国工場の生産キャパシティー(月産500万枚)を加えると 、世界規模では月産1000万枚の生産体制を既に整えていることになる。
とはいえ、PS3の爆発的な人気と、HD DVD追い上げに対する鼻息の荒さを考えると、現体制では早晩頭打ちになるのではというのが、私の偽らざる感想である。普及に弾みがつき、そうなってほしいという願いを込めて言っているのはもちろんだ。
| 筆者紹介 小原
由夫 おばら・よしお オーディオ&ビジュアル評論家。理工系大学卒業後、測定器エンジニア、AV専門誌の編集者を経て現在に至る。ハードからソフトまでの幅広い知識とそれに基づく評論、解説が支持を得ている。現在「nikkeibp.jp セカンドステージ」にて、「DVD 見方・聴き方・楽しみ方」や「AV評論家のマイホーム建築顛末記/インターネットで建築家と出会った! 家を建てた!」を好評連載中。 |





















