携帯電話番号ポータビリティ(MNP)制度がスタートし、各携帯電話会社(キャリア)も顧客獲得に躍起になっている真っ最中! しかし、ここでちょっと原点に戻ってみたい。そもそも“番号ポータビリティ”を導入しなければならなくなったのは、どうしてなんだろう。ユーザーにとっては選択の幅も広がるし、便利な制度ではあるけれど、携帯電話会社にとってはわざわざ獲得した顧客を手放すリスクを負うのに……。

 そう、もちろんこの制度は国が決めたのです。“番号ポータビリティ”制度にかかわった総務省の総合通信基盤局という部署に、どうしてこの制度が実施されたのか、その背景を詳しく聞いてみたい!……ということで、いつもの突撃取材スタート!

どどーんとそびえたつ、総務省のある中央合同庁舎

わーん、私があやしいのか、守衛さんが通してくれないよ。編集部のSさん探して合流し、なんとか関門突破

MNPがどうしてスタートしたのか、素朴な疑問をぶつける!

 今回、取材に応じてくださったのは、総務省総合通信基盤局電気通信技術システム課番号企画室の植松利紗課長補佐と、上野弘文係長です。残念ながらお写真はNGでしたが、私のぶしつけな質問にも優しく答えてくださいました。

京太:そもそもどうしてMNPを実施することになったのですか。その背景を教えてください。

植松さん:まずユーザーの間に、携帯電話会社を変わるたびに電話番号も変わってしまうのは不便である、という声が以前からありました。既に諸外国でもそういった制度が導入されていましたし、そろそろ日本でも検討すべき時期がきていると判断したわけです。

 ですが…実際にMNPを導入しようとすると、キャリア間をつなぐシステムのことや費用負担のことなどを検討しなくてはなりません。そこで平成15年11月に総務省の中に「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会」を作って討議し、最終的に平成16年4月に報告書を取りまとめました。その中で平成18年のなるべく早い時期を目処に実施することが適当であると結論付けられ、それを受け、総務省で実施に向けたガイドラインなどを作り、制度改正を行いました。

京太:なるほど、ユーザーの“不便である”という声が発端だったわけですね。それで、この研究会に参加されたメンバーは、総務省以外の方もいらっしゃるのでしょうか。それと、諸外国の現状も教えていただけますか?

植松さん:ええ、発端はユーザーからの声ですね。研究会の参加者は、ホームページで公開しておりますが、もちろんキャリアの方もいらっしゃいますよ。

京太:MNPは既に外国でも始まっていたそうですが、それらの国はどんな状況だったんですか?

植松さん:諸外国では、特に混乱もなくMNPを実施できたようです。でも、利用者が負担する金額や手続きにかかる時間などがまちまちで、単純にそれらのデータから日本のMNPはどうなるのか、といったことを判断するのは難しいですね。また、例えばMNP実施前後の時期に通信料金を値下げする事例もありましたが、それがMNPだけの理由とは言い切れません。ただ、全般にMNP手続きの所要時間が短い国では、MNPの利用率が高くなる傾向はありましたね。

諸外国の導入状況
キャリア 導入
時期
利用率※ 手続き場所 手続き期間 利用者負担
英国 1999.1 5%
(約251万人)
移転元
及び移転先
15~25日
⇒平均2日間
+1週間
(大量移転以外)
最大30ポンド
(約5,400円)
オランダ 1999.1 5%
(約60万人)
移転元
及び移転先
(販売店は不可)
3営業日 9.08ユーロ
(約1,300円)
スイス 2000.3 移転先のみ 無料
スペイン 2000.12 1.6%
(約53万人)
5日 無料
デンマーク 2001.7 11%
(約33万人)
移転先のみ 約30日 無料
スウェーデン 2001.9 5%
(約40万人)
移転先のみ 5営業日 無料
ノルウェー 2001.11 14.8%
(約59万人)
移転先のみ 6.5日 85ノルウェークローナ
(約1,300円)
イタリア 2002.5 1.6%
(約87万人)
30日
(目標5~10日)
無料
ベルギー 2002.10 2.2%
(約17万人)
移転先のみ 2日
(複雑な移転
以外)
最大15ユーロ
(約2,100円)
ドイツ 2002.11 0.47%
(約27万人)
移転元
及び移転先
平均4日+2日 22.5~24.95
ユーロ
(約3,100~ 3,500円)
アイルランド 2002.11 2.2%
(約6.6万人)
移転先のみ 2~数時間 無料
フランス 2003.6 0.1%
(約4.5万人)
移転元
及び移転先
30日 15ユーロ
(約2,100円)
EU平均 2002.4
(EU指令)
2%
(約600万人)
9日 14ユーロ
(約1,960円)
米国 2003.11 移転先のみ 2時間半以内
(推奨)
最大1.75ドル
(約190円)/月
シンガポール 1997.4 有料⇒無料
(2003年8月
より)
香港 1999.3 86.3%
(約578万人)
移転先のみ 1~2日 無料⇒40
香港ドル
(約540円)
(2002.3より)
オーストラリア 2001.9 8.6%
(約108万人)
移転先のみ 数時間 1事業者のみ
有料
(8豪ドル
(約 640円))
韓国 2004.1 0.9%
(約30万人)
移転先のみ 30分~1時間 1,100ウォン
(約100円)
※導入時からの累積の利用率 (出所:総務省)

京太:システムのことや費用負担について研究会で討議されたとのことですが、具体的にどんなことが問題になったのでしょうか。

植松さん:MNPを実施するためには、電話番号をキャリア間で受け渡すシステムが必要ですし、交換機なども変えなければなりません。ほかにも、MNPを受け付けるの流れも整えなくてはいけないのです。それらはどれもコストが発生します。

京太:そうした準備はどこが?

植松さん:それは総務省というより、事業者さんの方で相談していただいて、費用負担などについても話し合っていただきました。総務省としては自由な競争の場を提供したということです。

上野さん:そうですね。総務省は今持っている電話番号で、障害なく新しい事業者へ移動できるように促した、ということでしょうか。

京太:MNPが、ユーザーに何か不利益をもたらすようなことはあるのでしょうか?

植松さん:それはありませんが、番号を持って移動できるということが、変に誤解されてしまわないように、総務省でもパンフレットを作り、正しい知識をユーザーに持ってもらうよう努力してきました。メールアドレスが変更になることとか、手数料がかかること、通常の新規契約や機種変更と同様の費用がかかること、コンテンツの移動ができないことなど、混乱のないように今後も告知はしていくつもりです。

京太:MNPにからむ制度変更が11月1日と決まったのは、いつ頃のことなんでしょうか。

上野さん:今年2月には決まっていました。なので各事業者さんも10月中には導入してくださいとお願いしておりました。結局直前の24日にスタートした格好ですね。

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