今回と次回の2回に渡って、インターミッション的企画として、2006年6月下旬に完成した筆者の新しい仕事場を紹介したい。


  視野角いっぱいに広がる映像が夢だった。さえぎるものも、余計なものもなく、映像のフレームのみが視覚を埋める状況。それがどんな快感を呼び起こすものか、ぜひとも実現してみたかった。私の新居計画は、その願望を具体化する土地探しから始まったといっても過言ではない。

 家族4人が生活するスペースと、私の仕事場とをひとつ屋根の下に共存させるには、建ぺい率、容積率が高くなければならない。結局その土地探しには丸々1年を費やすこととなったのだが、当時の所得から借りられる銀行ローンの限度額がその土地購入のみでもういっぱいだったので、家を建てるのは、自己資金の調達なども含め、さらにそれから4年を要することとなった(2001年末ごろのことである)。

2006年6月下旬に完成した、小原氏の自宅兼仕事場 手前側にあるベランダ部分の下に小原氏の仕事場がある

 建物は、インターネットを介して情報を収集し、住宅プロデュース会社に委託した。建築家のコンペ、建築会社探し等を経て、2006年6月下旬に完成した。その詳細な顛末は、日経BPのWebサイト「日経BP セカンドステージ」にて連載(「AV評論家のマイホーム建築顛末記」)しているのでご一読いただけると幸いである。


  鉄筋コンクリート造/3階建ての1階部分に位置する仕事場は、地面から1mほど下がった半地下になる。天井高を高く保とうとすると、ほかの1階の要素(廊下や玄関など)も不必要に天井高が高くなる。それならばほかが一般的な高さに収まるようにし、仕事場のみを地面から下げ、高さを確保しようという建築家の判断である。その方がコストも安く済むとのことであった。

 最も高いところで3.5mを確保したが、そこに収めるスクリーンのサイズは、高さが2.5mの200インチ(横・縦の比率は16対9)が妥当な線と判断した。その横幅は、約4.5mとなる。画面周囲のブラックマスク部分を加味したとして、部屋の横幅6mが確保できれば申し分ないところだ。

 そうして弾き出した部屋の寸法は、縦9m×横6m×高さ3.5m。最終的には、建物の躯体の都合から縦・横とも数十cmずつ縮まったが、32帖という、まったく文句のない容積が確保できた。

重い防音扉の向こうに、小原氏の仕事場が見える 天井高は最大3.5m。右下にある三菱電機の3管式プロジェクターが小さく見える

 仕事柄、ある程度大きな音量を出すことが多いため、部屋の防音・遮音性能は重要な要件だ。コンクリートの躯体そのものの厚みが20cmあるため、このままでもかなりの遮音性能が期待できるが、コンクリート打ち放しのままでは響きが強過ぎて使えない。

 仕事部屋のみの設計・施工をお願いした音響建築会社は、部屋の壁にシンプルな浮き構造の遮音・吸音作用を施した。厚さは約15cm。表面のプラスターボードには、ダークブルーの珪藻土(けいそうど)を重ね塗りして仕上げている。

 天井はグラスウールを充てんした吊り構造の浮き天井で、仕上げはジャージクロス。床は音の反射を嫌い、吸音性があるコルクタイル仕上げとした。適度なクッション性もあって好ましい感触だ。

 このほかに、部屋の響きをフレキシブルに調整できるよう、市販の反射・拡散パネルを設置できる造作を壁に施した。窓はなく、24時間換気システムを導入し、ドアはスタジオ用の防音仕様である。全体としては、ややデッド(響きが少なめ)な状態としている。

壁面のブラスターボードにはダークブルーの珪藻土を重ね塗りして仕上げている。中央にあるのは機材搬入用のドアだ。その上には市販の反射・拡散パネルを設置している グラスウールを充てんした吊り構造の浮き天井。ジャージークロスによる仕上げと落ち着いた色合いはまるで映画館のようだ

 こうして出来上がった部屋は、午前一時にかなり大きな音量でロックのCDを聴いたり、アクション映画を観賞していても、建物の外にはほとんど音が漏れないという、まさに夢にまで見た防音・遮音性能が達成できた。

筆者紹介 小原 由夫
おばら・よしお オーディオ&ビジュアル評論家。理工系大学卒業後、測定器エンジニア、AV専門誌の編集者を経て現在に至る。ハードからソフトまでの幅広い知識とそれに基づく評論、解説が支持を得ている。現在「日経BP セカンドステージ」にて、「DVD 見方・聴き方・楽しみ方」や「AV評論家のマイホーム建築顛末記/インターネットで建築家と出会った! 家を建てた!」を好評連載中。

著者

小原 由夫(おばら よしお)

オーディオ&ビジュアル評論家。理工系大学卒業後、測定器エンジニア、AV専門誌の編集者を経て現在に至る。ハードからソフトまでの幅広い知識とそれに基づく評論、解説が支持を得ている。現在「nikkei BPnet セカンドステージ」にて、「DVD 見方・聴き方・楽しみ方」を好評連載中。