中学、高校と野球部に所属し、ただでさえむさ苦しい男子校で丸刈り詰めエリの汗くさぁ~い青春を送ってしまった尼崎太郎の耳に、聞き逃せないニュースが飛び込んできた。中学3年間、慣れ親しんだあの軟式野球で使用するボール、いわゆる“軟球”が、なんと55年ぶりにフルモデルチェンジして、新しい公認球として今年の夏から公式戦での使用がスタートするというのだ。

 『モデルチェンジとかいっても、長い歴史の中で生き残ってきたデザインなんだから、どうせ大して変わらないだろう』と高をくくっていたのだが、写真を見て驚いた。

ボールの表面からディンプルが消えちゃった!……代わりに、うっすらと三角形の模様が……何コレ!?

これまでの軟式野球ボール(写真右)と55年ぶりにフルモデルチェンジした軟式野球ボール(写真左)。ニュー・ボールでは、正三角形で構成されたスマートなデザインがあしらわれ、あの懐かしいゴルフボール型ディンプルが消えてしまった!

 こんなんイヤや~! あのポコポコしたディンプルがあってこそ軟球や!!

 つい最近、カメラマンに「今どき録音にICレコーダを使わず、テープレコーダーなんかでインタビューしてたら、平成生まれのアイドルに『実物を初めて見ましたぁ~』って感激されてしまうぞ」と嘲笑されて、すっかりへこんでしまったばかりなのに、このままいくと、1歳半の息子が成長してキャッチボールをする頃には、「父ちゃんの子ども時代のボールって、ぽこぽこしてたってホント?」とかなんとか言われてしまう……そんなんイヤや!

 汗と涙をかみしめながら大事な思春期をぽこぽこボールに注ぎ込んだ昭和30年代生まれの尼崎太郎としては、「モデルチェンジもむべなるかな」っていう科学的根拠がなければ、絶対に許さない!


打者にも投手にも野手にもいいことずくめのボール?

 そこで早速、財団法人全日本軟式野球連盟のホームページにGo! 「新公認球について(新公認球の意匠変更)」というページを見た。

 まず「コンセプト」には……

『楽しい野球』『素直によく飛ぶボール』 ※投手は変化球が投げやすく、野手は遠投しやすく、打てば遠くへ飛ぶボール!

と書かれていた。まさしくいいことずくめだ。次に「使用効果」に目を移した。

1:バウンド比較
従来に比べ“2バウンド目”がやや抑えられる傾向にあり捕球面(守備等)での扱いが容易になる傾向にある。

 おっ、守りやすくなりそうじゃん。

2:飛距離比較
従来に比べ“空気抵抗”がやや抑えられる傾向にあり約10%(※1)の飛距離アップが期待できる。
※1:飛距離試験機にて打出し、落下地点までの距離を比較…“新型/95m周辺”対“現行/85m周辺”

 へぇ、長打も出やすくなりそうじゃん。

3:打球道比較
従来に比べ“打球道”が素直になりより伸びてまっすぐ飛ぶ傾向にある。

 ふ~ん、今まで切れてファールになりがちだった打球もヒットになりやすそうじゃん。

4:投球比較
従来に比べ“縫い目”がより指にかかりやすく、効果的にボールに“力(回転)”を、伝えられる傾向にあるので、変化球もより変化が期待できる。

 おぉ、ピッチャーも打者を打ち取りやすくなりそうじゃん……って、おいおい、ニュー・ボールは守備にも打者にも投手にもいいって、あまりにも“いいこと”ずくめ過ぎないか!

 『そんな都合のいい話、にわかには信じられん!』といきりたってしまった尼崎太郎は、真偽のほどを確かめるべく、昭和9年創業の老舗にして軟式野球ボール製造の最大手のナガセケンコーを訪れた。

東京都墨田区にある「ナガセケンコー」。門構えからして、どことなく軟式野球ボール製造の老舗としての風格が漂っている

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