ブログに記した内容が原因で発生する「祭り」が急増している。

 「祭り」とは、巨大掲示板「2ちゃんねる」上で、特定の事象や事件に関するスレッドにユーザーが集中し、激しく盛り上がっている状態を指す言葉だ。
 以前からさまざまな団体や個人を対象に繰り広げられて来た「祭り」だが、最近はブログサイト中の記述が原因で「祭られ」てしまう個人の例が増えている。そして昨今、「祭られ」てしまった人は、実生活にも大きなダメージを受けることになりがちだ。
 最近起こった「祭り」の例をあげてみよう。中には現在進行中のケースもある。

【事例A】
 「交通事故を起こしそうになった相手をクルマから引きずり降ろし、土下座させた上にクルマに蹴りを入れて破壊した」とブログに書き込んでいた、自称「ブクロキング」こと大学生。
 「祭り」が始まるとすぐにブログを閉鎖するが、運営中に多くの個人情報を掲載していたため、「発掘※1」作業によって本名や所在地、学校名、果ては就職内定先企業などが割り出されてしまう。現在も関係各方面に対してさまざまな形での「突撃※2」が続いており、私立探偵が主催する有名サイトに直撃インタビューされたり、大学当局に呼び出されて指導されたり、といった憂き目にあっているようだ。

※1――対象サイトを精査し、他にも非常識・非道徳的な言動を行なっていないかを調べたり、検索エンジンなどを駆使して対象人物の個人情報などを調査すること。「掘る」「サルベージ」などとも呼ばれる。2ちゃんねる用語としての定着度は高くないが、本稿では便宜上この表現を使わせていただく。
※2――本人やその周囲に、メールや電話などで直接コンタクトを試みること。メールの場合は「メル凸」、電話の場合は「電凸」などとも略される。ブログサイトが対象の場合、まずトラックバックやコメント、メールで意見や批判が書き込まれることが多い。リンク先や所属先、取引先には「この人物が、このような非常識・非道徳的な言動を行なっていることを知っているか? あなたはどう思うか?」といったご注進に及ぶケースが多いようだ。
 また、所在地などが判明した場合は現地へ出向いて確認作業を行なったり、周囲の風景を撮影してアップローダーに公開するといった行動に出る人々もいる。彼らは通称で「現地班」「スネーク」などと呼ばれる。ちなみに「スネーク」は「METAL GEAR SOLID」というゲームに登場する、潜入任務を得意とするキャラクターだ。

【事例B】
 「奥さんが自転車で走行中、路線バスの運転士との間にトラブルがあったというので、バス会社の社員を呼びつけて恫喝し、謝罪させた」とブログに記すのみならず、謝罪に訪れたバス会社社員の顔写真と実名を掲載していたフリー編集者。実は奥さんがバスの運転士を挑発していたという書き込みもあり(真偽は不明)、祭り開始。
 トラックバックやコメントでの「突撃」に対して、「いつでもかかって来んかい」などと挑発。さらにまともな内容の批判だけを削除するという(“荒らし”的なコメントだけを残すことで印象操作を図った?)対応に出たことで、祭りは一気にヒートアップ。
 ブログと連携する形で開設していた事務所のWebサイト上には、事務所や自宅の住所、電話番号、主な取引先などが掲載されていたため、さっそく各方面への「突撃」が行われる。また、「幼女に足の指を舐めさせて母親に激怒された」「オートバイで公道上で150km/h以上で走行した」といった言動が「発掘」されてしまう。
 翌日にはトップページを閉鎖、さらに事務所のサイト自体も閉鎖して、以後沈黙を守るが、その後も各種の「突撃」が続いている。その影響か、「非常勤講師を勤めていた大学を退職した」「レギュラー出演していたテレビ番組を降板」といった情報が飛び交っている。

【事例C】
 無断撮影したと思しきオタクな人の写真を自分のブログに掲載し、「死ねば良いのに」などとコメントした格闘技選手。「発掘」作業によって、同様の無断撮影らしき写真+誹謗中傷コメント多数に加え、「家出少女に集団で性的行為を行なわせた」「電話ボックスの中にいる人が出られないようにしてから中に爆竹や花火を投げ込んだ「金属バット持参でチーマー狩り」等々、不良少年だった当時の話とはいえ、犯罪行為を面白おかしく書き連ねていることが判明。コメントへの「突撃」に当初は自ら書き込んで対応したが、その後サイトにパスワードロックをかけて閲覧不能状態に設定した。これが新たな「燃料※3」となり、現在、地道な発掘作業が進行中。

※3――「祭り」をさらにヒートアップさせる要素となる新事実や言動を指す。具体的には、対象サイトの精査や「発掘」作業によって、新たな問題発言や問題行動が発見されたり、対象者が応戦する、隠蔽工作に走るといった行動に出た場合など。

【事例D】
 ブログではないが、「各地の温泉の浴槽内で放尿」「放射線物質のトリチウムを川へ垂れ流す」「飲酒運転やコインパーキングの料金踏み倒し」といった所業をサイト中で記し、さらには検死中のご遺体の写真を無断、無修正で掲載などしていた医師。内容が内容だけに、かなり壮絶な「祭り」となり、写真週刊誌が本人を直撃取材するが、「患者からは訴えられていない。放尿や放射能物質については面白おかしく書いただけで事実ではない」などと答え、新たな「燃料」に。現在もスローペースながらスレッド継続中。

【事例E】
 これもブログではないが、エイベックス社の松浦勝人社長が「のまネコ問題」についてmixi内で記したコメントが各方面から批判され、事態をますます泥沼化させてしまう一因に。
 「のまネコ問題」については機会を改めて採り挙げたいが、ご存じない方のために簡単に説明すると、エイベックス社が販売するCD「恋のマイアヒ」の特典DVD映像中に登場し、同社が「オリジナルである」と主張するキャラクター「のまネコ」が、ネット上で広く親しまれて来たアスキーアートキャラクター「モナー」に酷似することに端を発する問題だ。
 この件に関してmixi内で質問された松浦社長は、「みんなを楽しませたい僕らと、そうじゃない人の戦いです」「冗談から冗談が生まれることをわからない人にはクリエイティブは理解できない」などと返答、その発言自体が「燃料」と化してしまう。それを受けてか否か、数日後、松浦社長は「アスキーアートにそれほどの文化と皆様の支持があることは2ちゃんねるを見ない私にはまったくわかりませんでした」「むしろ2チャンから派生したキャラクターが有名になっていくことに2チャンの方々が喜んでくれるのではとも思っていました。我々の考えが甘かったのかもしれません。そこは素直に謝罪します」との書き込みを最後に、mixiを退会する旨を表明する。しかし、この発言自体も物議をかもし、「祭り」は長期戦の様相を帯びている。

 「祭り」はなぜ起こるのか? 「祭られ」てしまったら、いったいどうすればいいのか?
  ブロガーの誰もが、いつ何時巻き込まれるかもしれない「祭り」について、今後数回にわたって考えてみたい。(松田 勇治)

第2回に続く