co.jpや汎用JPなどといったJPドメインの登録料はなぜ高いのだろうか? 年間で5000~1万円程度と「com」ドメインなどと比べて大きな開きがある。今回はこの理由に迫ってみる。


 そもそも今回の話題は、素朴な疑問がきっかけだった。米国のドメイン取得代行業者(以下代行業者)のホームページを見ていると「com」「net」「biz」「info」などで終わるドメインを取得する場合、登録料が年間8~10ドル(1ドル110円換算で880円~1100円)程度しかかからない。また、日本の代行業者にも年間770円という低価格を売り物にしているところもある。

 その一方で、ここ日本でJPドメインを運用するためには、「お名前.com」(http://www.onamae.com/)や「名づけてねっと」(http://www.nadukete.net/)などの代行業者に年間5000~1万円程度の登録料を支払う必要がある。「nikkeibp.jp」といった汎用JPドメインの場合、最も安い業者でも年間3510円かかる。この価格差はいったいどこからくるのだろうか。

 疑問に迫る前に、ドメインに関して少しおさらいしてみよう。日本で取得できるドメインには主に「com」「net」「biz」「info」などで終わるものと、JPで終わるものがある。「com」「net」などは、gTLD(generic Top Level Domain)ドメインと呼ばれており、国籍や地域に関係なく誰でも取得できる。

 一方、JPドメインは、大きく2つに分かれており、ひとつは「汎用JPドメイン」と呼ばれる日本国内に住所をもつ個人・団体・組織であれば誰でもいくつでも登録できるというもの。最近「nikkeibp.jp」など「企業名.jp」というドメインを見かけることが多いがこれにあたる。

 二つめは、「属性型・地域型JPドメイン名」と呼ばれる「co.jp」「ne.jp」など昔からおなじみのドメイン。その名が示すとおりドメインを見ればその組織や団体の種別や性格が分かる。そのため、誰でも取得できるというものではなく、例えば「co.jp」であれば会社法人など、「ne.jp」であればネットワークサービス提供者というふうに組織の存在、業務内容などが審査される。

お名前.comを運営するグローバルメディアオンラインなどは、ドメイン取得代行業者 日本レジストリサービス(JPRS)は、「co.jp」、「ne.jp」などといったJPドメインを管理する

 現在このJPドメインの登録や管理を行っているのが、日本レジストリサービス(JPRS)(http://jprs.jp/)だ。ただし、我々がドメインを取得したり登録料を支払う場合、日本レジストリサービスと直接やり取りすることは非常に少なく、ほとんどの場合代行業者を経由する。これらの業者は、一般的にレジストラと呼ばれており日本レジストリサービスの代理店となる。サーバーホスティング事業者などがレジストラとなり、サーバー料金とセットで登録料を支払う場合もある。

 各レジストラは、ユーザーからドメインの申請を受け付け、それを日本レジストリサービスに取り次ぐ。販売価格は、日本レジストリサービスに支払う価格に、諸経費を上乗せしたものになる。レジストラにより価格差があるのは、そのレジストラのサービス内容の違いや価格戦略によるものだ。

 レジストラから日本レジストリサービスには、汎用jpなら1件につき3500円が支払われている。ただし、この金額は公開されたものではない。筆者がプロバイダーなどに取材して得た数字だ。日本レジストリサービス取締役企画本部長・堀田博文氏は、公開しない理由を「各レジストラが様々な料金設定を行なっているため」と説明する。

 日本レジストリサービスでは、レジストラから受け取る金額には「運用上の信頼性と安定性を確保するためのコストが含まれている」(堀田氏)と語る。その内容として「高いセキュリティを確保したデータベース」「公平・公正な提供環境を確保するための諮問委員会の設置」「ドメインに関する紛争処理やサンライズピリオドの仕組みの提供」などを挙げている。なお、サンライズピリオドとは、優先登録期間のことで、正当な商標登録保持者がそのドメインを取得できるよう設けられた制度だ。

 ただ、この取材を通して分かったことがある。「今年度下期(2004年7月~12月)には、レジストラから受け取る登録料の値下げを検討している」(堀田氏)と言うのだ。

 今回予定されている値下げは、レジストラへのいわばドメイン卸し価格を下げるというものなのだが、気になるのはその値下げ幅。「検討している最中であり未定」(堀田氏)ということだが、ユーザーとしては「com」ドメイン並みを期待してしまう。一方、日本レジストリサービスでは、「現在の信頼性・安定性を犠牲にしてまでcomドメインの料金に近づけようとは思わないし、そうすべきではない」(堀田氏)とする。ただし、「多くの人が自由に取得できる汎用JPドメインは、属性型・地域型JPドメインより安くすることも検討している」(堀田氏)と胸の内を明かしてくれた。

 実は、筆者は自分のものや頼まれたものも含め数個のJPドメインを取得し、サーバーを管理・運営している。ホスティング事業者やプロバイダーのサービス内容については、色々と比較したり情報を集めたりもするのだが、ことドメインの登録料に関しては、税金や保険料のようにその価格やそれを決定する背景に疑問を持つこともなく当たり前のように支払ってきた。

 だが、今回の取材を通してそれではいけないと痛感した。ドメインの種類や事業者により、価格、サービス内容に違いがあり、ドメインは、市場原理の働く「商品」としての性格を持っていることになる。であるならば、消費者としてその価格の仕組みや提供されているサービスに十分な関心を持って接する必要があると思うのだ。

 とりあえずは、今年度下期に予定されている日本レジストリサービスの価格改定の様子を見て、それを受けた各レジストラのドメイン登録料がどの程度下がるのかを注目しようではないか。

【残念なお知らせ】
 4年以上にわたりご愛読いただきました「山崎潤一郎のネットで流行るもの」ですが、今回をもちまして終了することとなりました。毎週毎週頑張って書けたのも読者の皆様の叱咤激励があればこそでした。長い間本当にありがとうございました。
 ただ、コラム中で「いずれ取り上げる」と称してやり残した案件も多々あります。「山崎潤一郎のネットで流行るもの」は終わりますが、今後は、私自身の情報発信メディアとして引き続き個人的に運営していく予定です。新生「ネットで流行るもの」(http://www.insideout.co.jp/yamasaki/)もどうかよろしくお願いします。

筆者紹介山崎潤一郎yamasaki@geomet.gr.jp
1957年生まれ 蟹座のO型。本職は音楽制作会社のディレクターだが、インターネットに興味を持ち、ひょんなことからプロバイダーを評価する書籍を執筆。以来ネット系のライター稼業にも精をだす毎日が続いている。週刊アスキー、インターネットマガジン等に執筆。近著に『株の買い方・売り方が面白いほどわかる本』『稼げるIT資格親切ガイド(共著)』(中経出版刊)がある。 西日本新聞 「デジタルQ」連載「また買ってしまった」、Yahoo! Internet Guide連載「高速インターネット入門」も好評連載中。

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