このコラムでも、たびたび取り上げてきた「2ちゃんねる」だが、僕の場合、バスジャック事件、本コラムへの攻撃意見、数多くの中傷などといった連想が働くため、この掲示板サイトには、ついついネガティブな先入観をもって接してしまい、文章もそういった方向に向かいがちになる。

 ただ、2ちゃんねるには、そのような暗黒面だけでなく、趣味など同好の士が集まり、ほのぼのと情報を交換しあうスレッドもあり、貴重な情報の宝庫だったりもする。ネガティブな先入観を持つ僕自身も有益に利用させてもらうことも珍しくない。というわけで今回は、2ちゃんねる周辺に起きている、明るく健全な動きをご紹介してみたい。

 「ちゃんねるぼっくす」は、2ちゃんねる内で積極的な表現活動してる人々を支援するという主旨で運営されているサイト。主宰は有名なメルマガ発行システム「まぐまぐ」を立ち上げた深水英一郎氏。2ちゃんねるを立ち上げたひろゆき氏と仲の良い深水氏は、「2ちゃんねるに集まる面白い人々を応援するため」と、同サイトの目的を語る。

●メルマガの書き手に報酬を還元したかった

 深水氏は、「まぐまぐを作ったときから、書いている人に少額でもいいから報酬という形でお金を還元できる仕組みを作りたかった」と明かす。ただし「広告モデルでは納得できなかった」という。であるならばと達した結論が、ネットでつながった不特定多数の個々が集まって、リアルなメディアを作って売る、という方法だった。

 リアルなメディアとは、書籍、カレンダー、かるた、トレーナー&パーカー(具体的にはこちら)などだ。これらの商品には、2ちゃんねるの下に集まってイラストや文章で表現活動している人々の作品が使われている。つまり投稿作品で構成された商品ということになる。


イラスト上手な2ちゃんねらー達の作品が採用された2ちゃんねるカルタ(1800円)。おなじみのキャラ「モナー」が大活躍している。ただし、カルタは自分で裁断しなければならない。抜き型代を節約して価格を安価にするためだそうだ。カルタを納める箱も自分で組み立てる必要がある。ちょっと根性がいるかも

 メルマガというネット上の一大ムーブメントを演出した人間が、なぜ今さらリアルなメディアなのかと不思議に思ったりもするのだが、「イラストや文章の作者にお金を還元する仕組みを作るのであれば、“モノ”を作って販売してお金を稼ぐのが一番手っ取り早い」(深水氏)という考えだ。

 確かにネットがここまで大きくなり、誰でも簡単にホームページを持てる時代になった今、自分のホームページで、文章、イラスト、動画、音楽などの作品を発表しても完全に埋もれてしまい、見て聞いて読んでもらうことすら難しい。ましてやそこからお金を生もうなどというのは夢のような話に聞こえてしまう。

●イラスト作者に5万以上の報酬も

 ちゃんねるぼっくすは、そういった作品達をリアルなメディアに載せて世に出し、報酬という形で、作者にフィードバックするためのハブとして機能することを目指している。実際に、今回上記のような商品を販売することで、「イラストを描いた人に5万〜6万円のロイヤリティーが支払われた」(深水氏)そうだ。価格の10%前後をロイヤリティーと定めてそれを作者数で案分して還元するシステムになっている。考えようによっては、たかだか5万〜6万円ではあるのだが、当の作者達からすれば、そこには額面以上の重みがあると思う。

 「ハンドル名しかわからない不特定多数の個が集結して、リアルなメディアを作るという試みは今までなかったのでは?」(深水氏)と、ちゃんねるぼっくすの果たすべき役割と意義を強調する。また、「ちゃんねるぼっくすの側で何かをぶちあげて作るということは出来ないし、したくない。ユーザーの間で、面白いムーブメントが起き、それを裏方でサポートして盛り上げるためのハブになればいい」とも。

●2ちゃんねらー有志の第九演奏会も開催!

 実際、このサイトがハブとなり、ユーザー間で自然発生的に盛り上がっているリアルな動きがいくつかある。その一つが「第九プロジェクト」だ。ベートーベンの第九好きの2ちゃんねらー有志が結集して、4月に東京の「オリンピック記念青少年総合センター 大ホール」で演奏会を行おうというもの。指揮、オーケストラ、コーラス、ソリストまですべてを2ちゃんねらーで構成して演奏しようというビッグプロジェクトだ。また、それ以外にもこの夏をめどに、2ちゃんねらーによるオリジナル音楽を集めた音楽CDを作成するプロジェクトも動いている。

 それならば、僕の作品を使ってくれ、僕も参加したい、と考える人もいるだろう。そ ういった場合は、ちゃんねるぼっくすが発行するメルマガ「オンラインクリエイターズニュース」を購読することをお勧めする。このメルマガは、ちゃんねるぼっくすで行われるクリエイター参加型企画の告知等を不定期で知らせてくれる。企画に応募した作品は「サイトなどで行われる人気投票で選ばれたものが採用される」(深水氏)そうだ。

 また、何かおもしろい企画を持っており、2ちゃんねらー達とコラボレーションした い!という人もいるだろう。そういった場合は、「ちゃ箱共同企画募集」にコンタクトを取ってみるといいだろう。ここでは、応募の方法や、支援内容についての情報が記載されている。

 荒涼として殺伐たる魔界空間のようなイメージで語られることの多い2ちゃんねるだが、リアルな社会と同様に大勢の人が集まるところには、面白い考え方や動きも生まれる。ちゃんねるぼっくすの試みは、そんなダイナミズムを後押しして、膨大な情報の海に埋もれがちな個の才知を放出するための発射台となろうとしているのかもしれない。