Googleがひっそりと始めた出会い系サイト「Orkut」が話題を呼んでいる。筆者のところにも招待状が届いたので、早速入会してみた。


 この1月末、人気検索サービスのGoogleが、ひっそりと出会い系サイト「Orkut(オークト)」を始めた。興味津々その成り行きを見守っていたら、僕のところにも招待状がきた。んっ、招待状? 出会い系に招待状ってどういう意味、と疑問に思う人もいよう。Orkutは、友人知人の紹介がないと入会できないスタイルの出会い系サイト。友達の輪を広げよう!的なノリで、会員が友人知人に入会の勧誘メールを送付することでユーザーを増やしていく。紹介がないと、サイトへログインすることすらできない、ある意味非常に排他的なコミュニティだ。

 このサイトが立ち上がったのは、2004年1月22日、GoogleのソフトウエアエンジニアであるOrkut Buyukkokten(オークト・ブユコッテン)氏が個人的なプロジェクトとして始めた。彼はスタンフォード大学にいたときから「inCircle」や「Club Nexus」といった学生同士の交流サイトを作って、成功させた実績を持つ。であるならばと、インターネットユーザー全体に向けたサービスを作ってみようと考え、現在のOrkutが生まれたらしい。


Googleのエンジニア、Orkut Buyukkonkten氏が、Googleのバックアップの元、個人的プロジェクトとして始めた会員制の出会い系サイト「Orkut」。会員による紹介メールがないと入会できない仕組みのため、その稀少価値から招待状がオークションに出品されるなど、大きな話題を呼んでいる

Orkutの招待メールをもらえば、このように個人のプロフィールを載せたページを無料で作成できる。Orkutのコミュニティのなかで友人を増やしたり、特定の話題を話し合えるBBSなども作成できる

 ただ、いくらGoogleの社員が始めたからと言っても、あくまで個人的なプロジェクトだ。そこでGoogleとOrkutの関係についてGoogle側に聞いてみた。

 「OrkutのデモはOrkut Buyukkoktenによって1週間弱で作られました。Googleの社員は、インターネットユーザーに楽しんでもらえそうなこのサービスが、こんなに短時間で、自分たちの仲間によって作られたことに感動し、現在“仲間が作ったサービス”というスタンスでサポートしています」(Google広報)だそうだ。

●ちょっとセレブな優越感に浸れるのが人気の秘密?

 Orkutはサービス開始直後、まず手始めにシリコンバレーの企業幹部や技術者数千人にサービスへの招待メールを送付した。そして、その直後からシリコンバレー界隈では大きな反響を呼んだという。それに伴い、予想を超えたアクセスがサーバーに集中、許容量を超えて一時サービスが停止するという事態が起きたほどだ。

 この人気の秘密はどこにあるのだろう? 米国では、「Meetup.com」や「Friendster」などの出会い系サイトはあったのだが、Orkutの場合…、

人気のGoogleが始めた
   ↓
紹介がないと加入できない出会い系
   ↓
良質で選民的なソサエティーがそこにある
   ↓
ちょっとステイタスかも

 といったあたりの付加価値が一人歩きしてしまったのだろう。

 驚いたことに、オークションサイトのeBayでは、Orkutへの招待状が11ドルで落札されるに至った。選ばれし者のコミュニティへの憧れはここに極まりといった感じだ。ただし、先程、eBayでOrkutの落札価格を検索してみたところ約1~2ドルに暴落していた。現会員数がすでに10万人近くになっているため、価値が下がってしまったようだ。ちなみに、日本人の会員数は現在4000人程度だ。

 “Googleが始めた”“シリコンバレーの企業幹部や技術者”“11ドルで落札”といった華々しい形容詞が並ぶOrkutだが、僕のところへ招待状が来た時は、素直にうれしいと思った。なんというか「ああ選ばれてよかった」という優越感を味わうことができた。実際は、僕がたまたま、受け取れるポジションに居ただけなのだろうが、うれしい気持ちは隠しようがない。

 Orkutを知る人で、こういった気持ちを持つのは僕だけではないようだ。現に親しい友人や仕事仲間にOrkutへの招待状を送付したところ「光栄」「うれしい」という反応が返ってきた。まあ、中には「また迷惑メールかい、とゴミ箱に直行しかけた」「うさんくさいサイトだ」といった反応もあったが…。

●OrkutはGoogleの正式サービスになる?

 Orkutのコミュニティ機能は、なるほどよくできている。Orkutに登録する際、まずは可能な範囲で自分のプロフィールなどを書き込む。写真を載せることも可能だ。また、友達の輪を広げよう!とった感じで、招待状を出すことが奨励される。他会員のプロフィールは、友達の友達、そのまた友達といった感じで、Webのリンクをたどる要領で閲覧できる。現在、僕と直につながっている友人は5人だが、友達の連鎖でもってその背後には約1万3000人の輪が広がっている。

 「Music」「Pets & Animals」など、テーマごとに別れた掲示板も用意されており、この中でも友人を増やせる。もちろん、自分でスレッドを立てることもできる。

 また、友人同士が「この人のファンです」「信頼できる」「カッコイイ」「セクシー」などと評価をしたり、自分のプロフィールを何人が見たかが分かるカウンターもある。数字が上がっていくと何だか気恥ずかしい。評価やカウンターの数字のランキングページまで用意されていて、日本人では、あの伊藤穣一氏がランキングの上位に顔を出している。

 残念ながら、現時点ではOrkutサイトでは日本語が使えない。表示はもちろん書き込みなども英語が基本だ。僕は英語が苦手なので、掲示板などで交われている会話がどんなニュアンスなのか理解できない。だが、あらし的な変なヤツはいなさそうだ。そういった意味で安心して参加できるオンラインコミュニティとして機能しているのだろう。実際、「米国において、Orkutは信頼できるオンラインコミュニティとして受け止められているようです」(Google広報)ということだ。

 最後に気になるのは、OrkutがGoogleの正式サービスとなるのかという部分。これについてGoogle広報は、「Orkutは、できたばかりのサービスで、まだ様々なテストを行なっているベータ段階。Orkut Buyukkoktenは、Orkutのサービス提供時、Googleの製品の一つとして出すよりも、独立したサービスとして出したほうがよいと考えました。ただ、将来的には、Googleのサービスの一環となる可能性もあります」と明かしてくれた。

 このまま友達の輪が広がり、どんどん肥大していくであろうOrkutだが、ユーザー数が増えれば増えるほど選民的なコミュニティでなくなるわけだ。そうなった時に、今、多くの人がOrkutに感じているのような安心感や優越感をどこま維持できるのか現時点では判断がつかない。いくら何でも、日本の携帯電話の出会い系サイトのような犯罪の温床(ある一面だけど)になることはないと思うのだが…。


筆者紹介山崎潤一郎yamasaki@geomet.gr.jp
1957年生まれ 蟹座のO型。本職は音楽制作会社のディレクターだが、インターネットに興味を持ち、ひょんなことからプロバイダーを評価する書籍を執筆。以来ネット系のライター稼業にも精をだす毎日が続いている。週刊アスキー、インターネットマガジン等に執筆。近著に『株の買い方・売り方が面白いほどわかる本』『稼げるIT資格親切ガイド(共著)』(中経出版刊)がある。 西日本新聞 「デジタルQ」連載「また買ってしまった」、Yahoo! Internet Guide連載「高速インターネット入門」も好評連載中。

本連載コラムが大幅加筆で単行本化!
「ネットで流行るもの」


山崎 潤一郎 著
定価1180円+税
大好評発売中!

発行:日経BPソフトプレス
発売:日経BP出版センター

詳細はこちらから