以前指摘した、Bフレッツ「ベーシックタイプ」と「ニューファミリータイプ」は実質的には同一ではないかという疑い。まさにその通りだった。


 今回のコラムは「それ見たことか」という、ちょっと意地悪な気持ちで書かせてもらう。というのは、NTT東日本が提供するBフレッツの「ニューファミリータイプ」の提供方法に関して、以前のコラム「Bフレッツ『ニューファミリータイプ』の不思議」で指摘した通りの状態だったからだ。

 このコラムでは、僕が「ベーシックタイプ」から「ニューファミリータイプ」に乗り換えた際、宅内機器はもちろん、最寄りの電柱に設置されたクロージャーなどの一切の交換作業なしであっけないほど簡単に電話一本で乗り換えられたという話を取り上げた。

 加入者系の光ファイバーの100Mbps帯域を占有できるベーシックと、最大32ユーザーで共有するニューファミリーでは、そこで使用される技術が異なるため、本来であれば、光終端装置などの交換が必要なはずなのだ。だから、ニューファミリーというのは、NTTが他社との競争政策上理論武装するために設けたメニューであり、実質的にはベーシックとなんら変わりないのではないか、という疑問を投げかけた。


Bフレッツのメニューには、月額9000円で100Mbpsの帯域を専有できる「ベーシックタイプ」と、最大32ユーザーで共有する月額4500円の「ニューファミリータイプ」が用意されている。しかし、両者のサービス内容は同じだった。この件について、総務省はNTT東日本に対して行政指導を行った

 案の定だった。去る、11月12日、総務省は、このニューファミリーが電気通信事業法に違反する恐れがあるとして行政指導(http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/031112_3.html)を行なった。指導内容は、僕が書いたとおりのこと。つまり、回線共有型で提供されなければならないニューファミリーが、ほとんどの例でベーシックと同じ状態で提供されていたのだ。

 この指導に対し、NTT東日本では、ニューファミリーに関して「現時点ではサービス開始間もないこともあり、需要が少なく点在している過渡期の時期である」(総務省のリリースより)ためと釈明し、「需要が堅調に出始めたことから、早急にシェア設備方式(回線共有型の意)に移行するための社内検討を行っている」(同リリースより)と説明している。

 実際の回線共有型への移行時期として、新規ユーザーは2004年度中に、既存ユーザーは2005年度末までに実施すると、総務省に約束している。

 「指定電気通信設備」という制度で設備のアンバンドル、つまり他社への原価による貸し出し義務が課せられているNTTとしては、Bフレッツを価格競争力のあるサービスにするために導入した戦略だったのだろう。実際のところは、「EPON(Ethernet Passive Optical Network)」という光ファイバーの共有技術を導入するのには、それ相応のコストがかかる。32ユーザー共有型で「半分の16ユーザー程度の需要がないと元が取れない」(競争相手のFTTHサービス幹部))とする意見もあるだけに、「需要が少なく点在している」現状では、馬鹿正直にEPONを導入するわけにはいかないというのが本音かもしれない。

 となると、少なくとも加入者回線の部分に関しては同一だったわけで、ユーザーとして月額9000円のベーシックなど馬鹿らしくて契約する気になれない(ニューファミリーは4500円)。

●プロバイダーのメニューにも価格差があるが…

 もう一つ気になるのは、プロバイダーのメニュー。多くのプロバイダーでは、ベーシックとニューファミリーで、価格差を設けている。例えば、僕が現在利用している「BB.excite」では、ベーシック=月額1000円、ニューファミリー=月額500円と設定されている。

 普通に考えれば、プロバイダーのネットワーク部分で、収容する設備なり、割り当て帯域なりを、ベーシックとニューファミリーのユーザーで差別化していることから来る価格差と受け取れる。また、ベーシックを利用するユーザーには、価格に見合ったそれなりの快適性が約束されているのかと想像できる。それならユーザーとして、ベーシックを選ぶ理由にもあるだろう。

 だが、ことはそう単純ではないようだ。以下の話は、匿名を条件にある中堅プロバイダーの幹部が教えてくれたものだ。それによると、そのプロバイダーでは、ベーシックとニューファミリーで、設備などを分けて構築するような措置はとっていないという。つまり、プロバイダーのネットワーク内でも、ベーシックとニューファミリーは同じ扱いだったということ。もちろん、いずれの場合も光ファイバー接続に相応しい容量は確保しているという前提での話だ。

 ただし、プロバイダーがフレッツ網と接続する部分の網終端装置は、Bフレッツの各サービスごとに分けられているそうだ。

 じゃあ、何で価格差が付けられているのか、という疑問も出るが、「該当サービスで想定しているユーザー像と、そこから導かれる利用形態の予測」(プロバイダー幹部)と説明してくれた。つまり、“ベーシックのユーザーであれば、たくさん使うであろうから料金も高くね”という理由で、差別化された料金を設定しているわけだ。

 ユーザーからすれば、いい加減な料金設定方式という気がしないでもない。しかし、現在のプロバイダーのビジネスモデルを考えた時、ある程度やむを得ない部分もあるそうだ。というのは、NTTが光ファイバーやADSLで算出するような「コスト積み上げ型」の計算方法では、今のプロバイダービジネスは成り立たないという。むしろ、事業におけるリスクを計算して、その中で最大限の利益を確保するような方向性で料金を決定することになる。それゆえ、「たくさん使うベーシックユーザーは高く」でも、「需要の多いニューファミリーは戦略的に安く」という考え方で価格が決まることになる(実際はそこまで単純ではないだろうが…)。

 話をベーシックとニューファミリーに戻そう。すべてのプロバイダーが、上記のような料金決定を行い、設備や帯域も双方同じものを利用しているとは限らない。だが、ここで紹介したのは、名の通った中堅プロバイダーの例だけに、少なくとも同規模のプロバイダーであれば、同じ様な考え方で運営されている可能性は高い。

 加入者回線部分も同じ、上流プロバイダー部分のネットワークも同じ、となればユーザーとしてベーシックを選ぶ理由はどこにもなくなる(ちなみに、同時利用可能なPPP のセッション数も同じ)。

 というわけで、在野のBフレッツ「ニューファミリー」ユーザーとして、正直な気持ちを言わせてもらえば、「回線共有に移行しないで、このままにして!」と訴えずにいられない。ただ、他のFTTH事業者からは文句が出そうだが…。


筆者紹介山崎潤一郎yamasaki@geomet.gr.jp
1957年生まれ 蟹座のO型。本職は音楽制作会社のディレクターだが、インターネットに興味を持ち、ひょんなことからプロバイダーを評価する書籍を執筆。以来ネット系のライター稼業にも精をだす毎日が続いている。週刊アスキー、インターネットマガジン等に執筆。近著に『株の買い方・売り方が面白いほどわかる本』『稼げるIT資格親切ガイド(共著)』(中経出版刊)がある。 西日本新聞 「デジタルQ」連載「また買ってしまった」、Yahoo! Internet Guide連載「高速インターネット入門」も好評連載中。

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