「Live365.com」では、CDからリッピングした音楽を使って、ユーザーが自由にネットラジオを開局できるサービスを提供している。実際に試してみた。


 音楽好きには、多かれ少なかれ「僕の好きな曲を聴いてくれ!」「私はこの曲のここが好き」という自己主張があり、それを人に伝えたい気持ちがある。60年代70年代のロックが好きな僕にもそれは多分にある。

 そんな自己顕示欲を満たしてくれる手段として、自分の放送局を持って好きな曲ばかりを、がんがん流したいという願望をかねてから持っていた。今回は、そんな夢を叶えてくれるサービスをご紹介しよう。

 インターネットラジオのポータルサイトとして有名な米国の「Live365.com」では、月額7ドル45セント(最も初歩的なコース)を払えば、市販のCDからリッピングした音楽を、世界に向けてラジオ放送できるサービスを行なっている。まさに自分専用のインターネットラジオ放送局が持てるサービスだ。

 僕もこのサービスを利用して放送局を開局した。以下に、オンエア開始に至るまでの経緯と注意点をまとめてみよう。


アメリカのインターネットラジオポータルサイト「Live365.com」では、CDからリッピングした音楽を使って、ユーザーが合法的にネットラジオ局を開設できるサービスを提供している

●米国で著作権管理されている楽曲のみ、Jポップはダメ

 ネットで市販CDの音楽を扱う際には、著作権、著作隣接権など法律面での注意が不可欠。しかし、Live365.comでは、一般ユーザーでも手軽に市販CDの楽曲を流せる仕組みを構築してくれている。一定の条件さえ守れば、正々堂々と音楽を流せるのだ。

 その条件とは、使用する楽曲が、ASCAP、BMI、SESACといった米国の大手著作権管理団体によって管理されている必要がある点。Live365.comは、ネットラジオの楽曲使用料を、著作権管理団体にユーザーに代わって支払うことで、合法的なサービスを実現している。この支払いに対応しているのが、上記の団体というわけだ。

 そのため、有名アーティストのものであっても、流出音源による非正規盤やブートレグ(海賊盤)などからリッピングした楽曲は利用できない。正規レーベルより発売されたものに限る。また、日本のJASRACは、Live365.comが代行できる支払先に含まれていないため、Jポップなど日本の音楽を流すことはできない。邦楽ファンには残念だが、米国のサービスなのでしかたがない。

 自分の流したい楽曲が、ASCAP(http://www.ascap.com/)、BMI(http://www.bmi.com/)、SESAC(http://www.sesac.com/)で管理されているかを調べるのは簡単だ。上記団体のホームページには、管理楽曲の検索機能があるので、楽曲名や演奏者名で簡単に見つけられる。ただ、同じ作者・アーティストであっても、曲により管理団体が異なる場合があるので注意が必要だ。

 今回、放送を始めるにあたり、上記各団体のホームページで全ての楽曲の管理番号を調べ記録した。本来なら、ここでそのアーティスト名や楽曲のリストお見せしたいのだが、配信ルール(下記参照)により、内容の事前告知が禁止されているため、「60年代、70年代にヒットしたロックの有名曲を集めた放送」とだけお知らせする。そのスジの音楽に興味のある人は、今回開局した「Radio Real World」をぜひ聴いてほしい。クリック先のページで「Play」ボタンを押して、簡単なユーザー登録(無料)をすると、聴くことができる。

 このサービスはコースにより、割り当てられるハードディスクの容量が異なる。僕の場合はとりあえず個人向けの「P100」(3カ月契約で月額17.95ドル、1年契約だと月額14.95ドル)と呼ばれる100MBのコースからスタートした。曲の長さにもよるが、100MBあれば40曲程度のプログラムを作ることができる。このコースは、同時聴取数は最大で50人までと定められている。


楽曲のアップロードは、専用のソフトウエア(無料でダウンロード可能)、もしくは同社のサイトにアクセスしてWebブラウザーで行う。図はMac OS X用の同サービス専用ソフト

アップロード終了後でも、同サービスのユーザー用管理ページから、プレイリストを編集してオンエア曲の追加削除、曲順の並べ替え、シャッフル演奏などの設定も可能だ

 実際に楽曲を流す場合、上記権利関係のほかにも、米国の著作権法で定められた配信ルールを守る必要がある。以下は、Live365.comで紹介されている配信ルールの概要だ。

・その1
聴取者のリクエストから1時間以内にリクエスト曲を流してはならない。また、聴取者が指定した時間に流してもいけない。

・その2
3時間以内に、意図的に同じアルバムから3曲以上流してはならない。また、2曲の場合でも2曲連続して流してはならない。また、同じアーティストのCD、アンソロジーセット、ボックスセットから4曲以上(連続演奏は3曲まで)流してはならない。
【山崎注釈】:「意図的に」という文言があるのは、シャッフル演奏で偶然流れるのはOKという意味か。

・その3
同じプログラムを繰り返し放送する場合、プログラムの長さは3時間以上なければならない。

・その4
番組の再放送は、次の決まりを守らなければならない。
 1時間以内の番組は、2週間のうちに3回以上放送してはならない。
 1時間以上の番組は、2週間のうちに4回以上放送してはならない。
【山崎注釈】:「その3」でいう「繰り返し放送」(Continuous looped programs) と、ここでいう「再放送」の違いがどこにあるのか不明。

・その5
番組内容の事前告知は、いかなる形であってもしてはならない。

・その6
米国内での演奏が許可されてない曲を放送してはならない。
【山崎注釈】:放送や発売が禁止されてる曲は流してはならないということだろう。

・その7
収録された音楽に著作権保護などの技術が使われていたら、それを無効にしたり取り除いたりしてはいけない。

 ここに記した内容は、英語の苦手な僕が、ない頭を絞って手伝ってもらいながら解釈したものなので、正確さは保証できない。ぜひ原文(http://www.live365.com/info/rules.html)を読んで判断してほしい。また、この方面に詳しい方の解釈に対するご指摘も大歓迎です。

●それって自己満足?

 さて、実際に自分の放送局を持ってから約1週間が経過した。僕自身、仕事をしながら聴いている。ただ、それだけでは、パソコンのハードディスク内のファイルを再生するのとどこが違うのか、と問われたら返す言葉もない。それに、ハードディスク内のMP3ファイルは、ビットレート128kbpsだが、ラジオでは64kbpsと音質が悪くなっている。

 だが、そういった疑問には、トラさんではないけれど、「それを言っちゃあおしめーよう」という言葉を返そう。自分が選んだ曲が世界に向かって流れている、と思うだけでうれしくなる。それに友人知人にも「僕の放送局」と言って自慢している。それ以上でもなければ以下でもない。でも、それで十分満足だ。

 Live365.comには、専用のソフトを使ってライブ放送を行なう仕組みも提供されている。機会があれば、オンエアした曲の背景やエピソードなども、DJ風にしゃべってみたいなとも思っている。

 さて、Live365.comが提供しているこのサービスだが、米国における法律に則って運営されている。そういった意味で、日本在住の僕がこのサービスを利用して、市販の音楽CDからリッピングしたMP3楽曲をオンエアすることに違法性はないのか、という疑問もあろう。日本に住んでいるのだから、日本の著作権のルールに従うべきという意見もあると思う。

 だが、今回このコラムを書くにあたり、そのあたりは敢えて考えないことにした。ネットのサービスが国境を越えて利用できるにも係わらず、リアル社会の制度がそれに追いついていない現状では、シロクロの決着をつけられない問題はたくさんある。そういった追いつけないままの制度やルールに対し過敏に反応していたのでは、このサービスのような、せっかくのネットの醍醐味を楽しめなくなってしまう。

 ということで今回は、国境を越えた際のグレーな部分には目をつぶって、米国で合法化されたサービスをおもいっきり楽しんでみようという考えでこのコラムを書いてみました。


筆者紹介山崎潤一郎yamasaki@geomet.gr.jp
1957年生まれ 蟹座のO型。本職は音楽制作会社のディレクターだが、インターネットに興味を持ち、ひょんなことからプロバイダーを評価する書籍を執筆。以来ネット系のライター稼業にも精をだす毎日が続いている。週刊アスキー、インターネットマガジン等に執筆。近著に『株の買い方・売り方が面白いほどわかる本』『稼げるIT資格親切ガイド(共著)』(中経出版刊)がある。 西日本新聞 「デジタルQ」連載「また買ってしまった」、Yahoo! Internet Guide連載「高速インターネット入門」も好評連載中。
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