物騒なご時世。自分の身を守るのは自分、ということでブロードバンド時代ならではの、ホームセキュリティの構築方法を今回は紹介! ネットワークカメラで不審者を監視するシステムを導入してみた。

 今でもあの時の恐ろしくも悔しい思いが脳裏をよぎる。結婚間もないころ、5階建てマンションの最上階に住んでいた。共働きの僕たち夫婦は帰宅が別々になることが常で、その日は夜7時過ぎに、僕の方が先に帰宅した。ガチャンとドアを空けた瞬間、ベランダからゴトンという音がして、何者かが屋上を走って逃げる音を聞いた。「ドロボーッ!」と声にならない声を発し、心臓の鼓動が一気に跳ね上がる。でも、恐怖からなのか、頭の中が真っ白になって、30秒、いや1分かもしれない、その場に立ちすくんでいた。

 最近、テレビでしばしば取り上げられるドロボー関連の話題。あれを見るたびにその時の記憶が蘇る。幸い実害はなかったが「不審者に侵入されかかった」という事実だけで精神に大きなダメージを受けた。

 そういった経験からか、僕のセキュリティ意識は、けっこう高い。そこで自宅の新築を機に、有名警備会社のホームセキュリティシステムを導入しようと見積もりをとった。初期費用50数万円+月額4500円だった。月額費用はまだしも、初期費用を捻出できずに導入をあきらめた。

 だが、警備会社の提案書を見ているうちに、これに似たことならブロードバンド回線とネットワークカメラの類を組み合わせればできるのでは? という思いが頭をもたげたのだ。というわけで、やってみました。DIY型のITホームセキュリティ「ネットワークカメラ編」導入顛末記!

●まずはWWWサーバー付きネットワークカメラを用意

 まず、用意したのは九州松下電器の「KX-HCM1」(5万2800円)というネットワークカメラ。本体にWWWサーバーを内蔵しているので、LANケーブルを差し込むだけで単体動作する。つまり、カメラ表示用にパソコンを常時起動しておく必要がない。これを玄関の天井に取り付ける。

 実は、我が家の玄関は、そこだけが出っ張った特殊な構造になっていて、向かい合わせで2枚のドアがある。一方は通常の玄関だが、その反対側には、ガレージへ出入りするためのガラス張りのドアがある。ガラス張りにしたのは採光や借景を考慮してのこと。ただ、一面ガラスなのでセキュリティ的にちょっとばかり心配だ。そこで、このドアをネットワークカメラで見張ろうというわけ。

 警備会社のホームセキュリティをあきらめた時点で、こんなこともあろうかと、電気屋さんに頼んで玄関の天井にLANポートとコンセントを設置してもらった。ここまで用意しておけば、カメラの設置はいたって簡単。カメラを取り付けて、LANケーブルを差し込むだけ。LANの一方の端は自室のクローゼット内に設置した集線口を経由してブロードバンドルーターに接続する仕組みだ。


天井に設置されたネットワークカメラ。巨大なACアダプターがいまいちスマートじゃないのがタマにキズ。それからLANポートとコンセントがカメラより前にあるのは、カメラの画角を十分考慮しないで工事を頼んだ僕のミス

カメラ画像はブラウザーで見る。もちろん外出先からネット経由で見ることも可能。チルト&パン機能が付いているので遠隔操作が可能。ちなみに、対応する機種であれば携帯電話からも見て操作できる

●ダイナミックDNSを上手に使って外出先から監視

 さて、カメラを取り付けたら、その画像を出先からネット経由で見る設定をしよう。そこで、問題になるのがIPアドレスだ。まず、一部のCATVの様にプライベートアドレスの割り当てでは基本的に無理。幸い我が家はBフレッツを導入したので、契約しているプロバイダーからグローバルアドレスが動的に割り当てられる。できれば固定がいいのだが、通常、プロバイダーの用意する固定アドレスのメニューは値段が高い。

 どうしたものかなと思案した結果、動的に割り当てられたアドレスをメモって出かければいいじゃん! という単純な結論に達した。そのアドレスを直接ブラウザーに入力すればアクセスできる。それに、動的割り当てとは言え常時接続回線なのでそんなに頻繁に変化するものではない(プロバイダーによるが…)。原始的だけど安上がりで単純な方法だ。

 ただ、LAN内には複数のパソコンが存在するので、外部から接続可能な機器をカメラに限定するため、ブロードバンドルーターのポートフォワード設定を行う必要がある。これで、割り当てられたグローバルアドレスでアクセスすると、カメラのWWWサーバーが表示されるようになる。

 考えてみれば、IPアドレスをメモって出かける行為は、IT型ホームセキュリティ構築を目指すものにとってみれば、いまひとつイケてない。部下にメールをプリントアウトさせるおじさん上司みたいだ。そこで、『マイサーバーの夢をかなえる「ダイナミックDNS」』で紹介したダイナミックDNS(DDNS)のサービスを利用してみた。DDNSサービスとは、動的に割り当てられたIPアドレスに対して、好きなドメインネームを自動的に割り当ててくれるサービスだ。これならIPアドレスが変わっても決められたドメインネームだけでアクセスできる。

 DDNSを効果的に利用するには、動的に割り当てられたIPアドレスを適時DDNSサービスに登録する必要がある。これを自動化するフリーソフト(DiCEなど)が存在するが、残念なことに、このネットワークカメラでは、そのようなツールは使えない。九州松下電器では、自社の製品用に「みえますネット」というDDNSサービスを運用しているのだが、これが月額3000円とちょっと高いのだ。世の中には無料で利用できるDDNSがあるのに、とても毎月3000円を払う気にはなれない。

 どうしたものかと思っていたら、あっけない解決方法が見つかった。LAN内のパソコンは1日1回は必ず起動するので、パソコン側でIPアドレス自動更新ツールを起動させればよいのだった。カメラだけで全てを解決させようとしたのが間違いだった。

 マックユーザーの僕は、NoIP.comという無料のDDNSサービスと、そこで配布されているマック用の自動更新ツールを利用することにした。Windowsユーザーの方は「DiCE DynamicDNS Client (自宅でインターネットサーバー)」にDDNS関連の情報がある。

 これで、動的割り当てのIPアドレスが変わっていても、出先からドメイン名でアクセスすることができる。


このソフトを起動しておくと動的に割り当てられたIPアドレスが、ダイナミックDNS側に自動登録されドメイン名でアクセス可能となる。独自のドメインを利用することもできる

●異常時に緊急アラートメールを!

 よくよく考えてみれば(別に考えなくてもわかるが)、出先から四六時中カメラの画像を見張っているわけにはいかない。たまたま画像を確認した時に運良く(?)ドロボーが写っていた、なんてことは盲亀浮木(注)の例えのごとくあり得ないに等しい。これではセキュリティカメラの意味がない。

 だが、ご安心召され。このカメラにはドアの開閉センサーや人感センサーに反応した時だけ、指定したメールアドレスにメールを送信して、その際に撮影した静止画をWWWサーバーに転送する機能が備わっている。つまり、センサーが異常を検知したら、携帯電話で警告メールを受信して、あらかじめ準備しておいた画像確認用のホームページで、ドロボーが写っているかもしれない静止画を見ることができるわけだ。よ~し、どうせやるならこのシステムまで構築してしまえ! と、これもDIYで取り付けることにした。

 ということで、今回はひとまずここまで。次週もDIY型のITホームセキュリティの第2弾として、ドア開閉センサー連動型カメラシステムの構築法や、その他のセキュリティ製品紹介、ならびに、もし画面にドロボーが映っていたらどうすればいいの? という緊急時の対策などについても可能な範囲で言及したい(事が事だけに全てオープンにしてしまうわけにはいかないのでお許しを)。こうご期待!

(注) 〔百年に一度海面に浮上する目の見えない亀がたまたまそこに漂っていた流木の穴に頭を入れたという「涅槃経」にある話から〕仏の教えに出会うのが容易でないことのたとえ。また、非常にまれなことのたとえ。浮き木の亀。(大辞林より)


筆者紹介山崎潤一郎yamasaki@geomet.gr.jp
1957年生まれ 蟹座のO型。本職は音楽制作会社のディレクターだが、インターネットに興味を持ち、ひょんなことからプロバイダーを評価する書籍を執筆。以来ネット系のライター稼業にも精をだす毎日が続いている。週刊アスキー、インターネットマガジン等に執筆。近著に『株の買い方・売り方が面白いほどわかる本』『稼げるIT資格親切ガイド(共著)』(中経出版刊)がある。 西日本新聞 「デジタルQ」連載「また買ってしまった」、Yahoo! Internet Guide連載「高速インターネット入門」も好評連載中。